信じたい。信じたくない。２

取り返しのつかないこと ページ5

伊野尾side


日が経つにつれて、俺はイライラが積もっていった。


ひかるは話しかけてくれるけど、それが本当かどうかわからない。


嫌いなら嫌いってはっきり言えばいいのに。


俺はひかるがほんとに大好きだった。


初めだって、仲良くなりたかったから、薮と一緒に話しかけた。




でも今は、本当に好きかって聞かれたら、すぐに首を縦にふれない。




ある日ひかるに話があると呼ばれた。


ひかるは用事があるらしく、教室で待っていた。



伊『ひかるってさ、ほんとなんなの！？』


伊『もうほんっとイラつく！』



薮にひかるの愚痴を言っていた。


俺はひかるを信じてた。


だからこそ、余計に腹が立つし、悲しい。





土日を挟んだ後の月曜日、ひかるは学校に来なかった。


宮城に転校したんだって。


...俺たちにはなんにも言わずに。


やっぱりひかるにとって俺たちってそんなもんだったの？


やっぱり嫌いだった？


そう思いながら放課後の廊下を薮と歩いていたある日。



薮『委員会疲れたなー。』


伊『そうだねー。』



『ぎゃはははは！』


ある教室からすごい笑い声が聞こえた。


３年生の教室だ。



『そういえばさ、知ってる！？』


俺達は静かに通り過ぎようとした。


『やおとめさぁ！転校したんだって！！』


八乙女。その名前に足が止まった。


八乙女なんて名前、そうそういない。



そういえば、どこかで聞いたことのある声だ。


俺たちに、ひかるに嫌われてるって言ったやつ。



男1『俺達の嘘だって気づかずにさぁ！笑』


男2『もうまじで最高なんだけど！笑』




...え？


嘘？


どういうこと？


隣のやぶを見ると、やぶもありえないというような顔をしている。




俺達は気づいたらひかるの家の前にいた。


表札には、何も書かれていない。



そこでようやく、俺達は取り返しのつかないことをしたんだ。そう思った。

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