信じたい。信じたくない。

指輪 ページ27

光side


冬休みが終わってしばらくして、俺は退院した。


今は部屋の片付けしている。


俺はまた、東京に戻ることにした。


他の知らない土地でも良かったけど、やっぱり、母さんと暮らしたあの土地に、戻りたかった。


ここには、母さんの荷物もある。


治ると信じてたから、持ってきていた。


だけど、いい加減整理しないと。


そうだ。高校はどうしよう。もう辞めようかな。


お金もないし、働こうか。


そう考えながら母さんの荷物を整理していると、



ぱさり...



光「あれ、なんか落ちた。...封筒？」


持ち上げたポーチの口が開いていたのか、封筒が落ちた。


ポーチにはマジックで『捨てるな！！』と書かれている。


中を見てみると、手紙と通帳が入っていた。しかも大金。


光「どうしたんだよ...こんなお金...。」


手紙には、俺宛のメッセージが書かれていた。



高校には絶対いくこと。


病気にはならないこと。


幸せに過ごすこと。


笑顔でいること。



そんな内容が書かれていた。



光「高校行けってか...。母さんらしいや。」


乱暴に目元を擦って、ポーチを見ると、母子手帳や小さい頃の写真、母さんの手書きであろう、レシピが書いてあるノートが入っていた。


料理もしろってことかな。てか、俺のことばっかりじゃん。


光「...ん？これ、指輪？」


このデザイン、どこかでみたことがある。


俺はポケットから指輪を取り出す。


これは母さんの指輪。


光「同じだ...。」


裏のイニシャルも同じ。


こっちは、父さんのだ。


母さんは俺に父さんの話をしたことは一度もない。


だから母さんの中で父さんはもう過去のことなんだと思っていた。


だけど、違ったんだ。


母さんも寂しかったんだ。


俺はその二つの指輪をネックレスのチェーンにつけて、自分の首につけた。


大小異なる二つの指輪。


大きい方の指輪が小さい方の指輪を包み込んでるように見える。


もう離れない。


俺達はずっと一緒だ。

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