信じたい。信じたくない。

限界 ページ24

光side


今日は平和な1日がおくれる。


昨日の夜まではそう思っていた。


今は冬休みだから学校で殴られずにすむし、叔母さんは愛人ができたらしく、今日は帰ってこない。


今日は、何もしなくていいんだ。


俺は風呂場の鏡の前に立った。


服をめくると、大きなアザがあちこちにある。


治る前にどんどん殴られたりするから治るどころか悪化していて、色が紫になっている所もある。


もともと細い方だった体も、ただやつれただけ。


俺は鏡から目をそらし、湯船の蓋を開けた。


昨日溜めたお湯だからもう水になっている。





おれはたぶん、限界だったんだろう。





ポケットからカッターを取り出して、左手首に当てた。


ぐぐっと力を入れると、どんどんカッターが沈んでいき、それに比例するかのように、どんどん俺の血が出てくる。




不思議と全然痛くない。




母さんを失った痛みと比べたら。


毎日のように振るわれる暴力と比べたら。


母さんが病気と闘っているときの苦しみと比べたら。




母さん。ごめんね。


俺のせいで病気になっちゃって。


あなたこそ、この世にいるべき人間だった。


親友だと思っていた人にも裏切られ、学校に行けば暴力を振るわれ、家に帰ってもまた暴力を振るわれる俺は、この世に必要ないんだ。


なんでもっと早く気づかなかったんだろう。


光「母さん...。今そっちにいくから...。」


俺は左手を湯船につけ、重くなってきた瞼に逆らわずに、目を閉じた。

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