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『ガードが堅いんだって、あんたは』
「ええ?そんなつもりないけど」
『男子はそう見えてんの。一人でなんでもできそうな、んー近寄り難い感じ?』
それは萩花もそうじゃん、という言葉は飲み込む。
なに言われるか分かんないからね。
…にしても。
「わたしって視野狭い?」
『恋愛に関しては、かなりね』
断言するように言い放った萩花。
…いつの間にかジュース飲んでるし。
グロスが塗られたきらっと輝く唇に、ストローが挟まれていて。それを含みながらまた口を開く。
『山田くん一心だから気づいてないだけで、Aのこといいなって思ってる人はいるって』
「そんな気配、全然感じませんけど」
『ちょっととっつきにくそうに見えるから、あなた。そんな男子と絡まないし」
…とっつきにくそうって。ちょいちょい悪口はさんでくるのやめてほしい。
『…ていうか。想うより想われる恋のほうが幸せじゃない?』
「彼氏がいるからって高みの見物…」
『ふ、まーそう言われちゃそうだけど。へたに傷つかないじゃん』
…ごもっともだ。涼介を好きでいてずっと感じてた。
自分が追い続ける恋は消耗戦だし、なにより心がしんどくなってくる。
それは、身に染みてわかってるんだけど。
…今更止められそうにないから、彼に対するこの気持ちが。
なにより。
「想ってくれる人ねえ、…」
いるんだろうか。
わたしのことを、そんな風に。
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作者名:やぎ | 作成日時:2024年3月7日 15時