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いつだったか。萩花に詰められて、ついうっかりこぼしてしまったんだ。
涼介に好きな相手がいること。
バイト先によく来てくれる同い年の他校の女の子、冬優ちゃんの存在のことを。
もちろん誰にも言わないよう、内密に。と散々釘を刺している。
もし口を割ったら絶交だかんね、と脅しているからきっと大丈夫はなず。
彼女はこう見えて義理堅いから。
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『山田くんも罪な男だよねえ、』
「んー…?」
『だって。一年から同じクラス、同じ部活、しかも同じバイト先の子が近くにいるのに。別の子見てるとか…ちょっとさぁ、』
「もーやめて、それ以上言われるとわたしの心が死ぬ」
両手を挙げて降参のポーズ。
萩花の今の言葉は打たれ弱い私の心にすべてクリーンヒットしていった。
全部事実だから余計に抉られたし。
机に項垂れて瀕死間際のわたしを見て、ごめんごめんと笑う悪魔みたいな友だち。
…思ってないだろ。
涼介に関しては繊細なメンタルになってしまうんだから、もう少し丁寧に扱ってほしい。
『だれかこの泥沼片思いをしてる女を癒してくれる人はいないのかね〜』
「いるわけないでしょ。てか泥沼って言わないで」
失礼な。こっちはいたって純情な片思いをしているつもりなんだ。
関係性が昼ドラみたいとかこの前笑われたけど。
『べつにAモテないわけじゃないし」
「どこに目ついてんの…」
『ほんとだって。黙ってれば意外と可愛いとか綺麗って言われてるよ、影で』
「待って、なんかいろいろツッコミたいんだけど」
黙ってればってなんだ。喋るとダメってこと?
可愛いとか綺麗は、…まあ嬉しい。言われてるのか知らないけど。
ただ影ってなに、?それは陰口じゃなくて?
だめだ。マイナス思考すぎてそっちに寄っていってしまう。
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作者名:やぎ | 作成日時:2024年3月7日 15時