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涼「つーか、期末の範囲エグくない?」
私が持っていた範囲表に視線を落とすと、見るだけでもイヤそうに顔をしかめた涼介。
分かるよ、その気持ち。
範囲表を見ただけでアレルギー反応が出るのはやっぱり学生共通だよね。
「ほんと。数学の人とか、黒板にいつまで経っても範囲書いてたから1人で絶望してたし」
涼「あー、あれね。もうみんな顔死んでたから」
「永遠と書き続けるじゃん、て」
涼「はっ、そうそう。途中からなんか面白くなってたよな」
その場面を思い出したのか。
噴き出して、屈託のない笑みを見せる涼介。
…あ、かっこいい。好きだな、その表情。
何気ないことで心臓がトクっと揺れ動くのを感じる。
だって、しょうがない。
今のはわたしに向けて笑ってくれたもので。
それに勝手に特別さを感じてときめいてしまうのは、好きな人なんだし。
涼「Aって英語が得意なんだっけ」
「まあ、他のに比べたらまだ良いかな?」
涼「とか言って、中間で良い点とってたじゃん。あ、うちのクラスの英語が平均点異常に高いのお前のせいだろ!」
「どうかなあー」
学校でも涼介とはよく話す。
わたしから話しかける時もあるけど、涼介からの方が圧倒的に多い。
これは自惚れとかじゃなくて、ほんとに。
部活以外にもドラマとかゲームとか、好きな芸能人の話とか。本当に他愛もないことを話していて。
涼介は席が離れてても”A"って言って来てくれるから。それだけで心がふわふわして、緩みそうになる口角を必死で抑えてるんだ。
本人はなんも意識してないから厄介なんだけどさ。
でも、私はそのたびに…あーあ。好きだな、って。
もう正直どうにもなんなくて。
どうにもなんないし、自分でも手がつけられそうにないから。
「涼介はなに?得意科目」
涼「ありませんけど?しいて言うなら体育くらいですけどなにか?」
「うん、知ってた」
涼「ねーいつからあなたはそんなに意地悪くなったの?」
誰にも迷惑かけないから。
こうやって一人で静かに想わせるくらいさせてほしい。
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作者名:やぎ | 作成日時:2024年3月7日 15時