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涼「赤点回避のために俺らに英語を教えてください」
誠意のこもった目と言葉遣い。
おまけに頭を下げて態度もばっちり。
ちなみに、隣の大貴もそれに続いて同じく頭を下げている。
調子のいいヤツ。
大「お互い期末近いから、それじゃ一緒に勉強するかって話になって」
涼「大ちゃん家でやってたんだけど…」
「英語でつまずいたと」
「「はい…」」
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言われなくともわかっていた。
大貴のあの連投メッセージもそうだし。
なにより今、目の間に広がっている惨状を見れば。
「なにをどうしたらこんな汚くなるの」
大「…あーでもない、こーでもないってやってたら、」
涼「…いろいろ散らかっちゃって、」
気まずそうな二人。
怒られているような、責められているような様子。
それもそうだ。
今、わたしたちが囲んでいる丸いテーブルとその周辺には。
英語の教科書、参考書、問題集やらがいくつも広げられていて。
しかもページが開かれたままの状態。
近くには学校で配られたプリントが何枚も乱雑に置かれていたり。
途中でシャー芯を替えたのかその取り替え容器が床に落ちていたりと。
筆記用具も散らばっていてもうめちゃくちゃ。
「逆にすごいね」
涼「すみません。ほんとうに」
大「こんな所に呼んでしまって申し訳ない」
呆れからくる感心でそう言葉を漏らせば、即座に二人から謝罪が入る。
いつの間にかどちらも正座をしていて、出会って間もないはずなのに気が合うっていうか似ているっていうか。
まあ今はそんなことどうでもいい。
さっきまで涼介の存在に気を取られてスルーしていたけど、改めて眺めるとひどい。ほんとに。
テスト前はこうなりがちだけど。にしてもひどい。
大「呼ぼうかは迷った。Aも忙しいだろうし、散らかってるから。一応女子だし、」
涼「うん、迷った」
何も言わずにこの光景を眺めていたら、大貴がうかがうように言葉を発する。
続いてすぐに涼介もフォローするように相槌を打ってきた。
連係プレーかって。
それに一応ってなにさ。ほんとに迷ったの?
あんなしつこく連絡してきたのに?
という言葉は今は飲み込む。
もうツッコんでいたらキリがない。
それだけ切羽詰まってたってことだよね。
そういうことにしておいてあげよう。
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作者名:やぎ | 作成日時:2024年3月7日 15時