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7月になってしまえば、もう1ヶ月も経たないうちに夏休みがやってくる。
…だけどその前に。
学生にとってやっかいなイベントが控えていて。
「ていうか数学、範囲広すぎじゃない?」
『んね。あたしはもう、赤点回避できたらそれでいいや』
「あの野球部の顧問、試合負けたからって絶対腹いせに増やしたでしょー…」
『やりかねなくて笑えない』
さっき配られた"期末試験範囲"なんて大大的に書かれた紙ペラを恨めしく眺める。
そう、期末試験である。
7月の後半にあって、これを乗り越えなきゃ私たち学生に夏休みはやってこない。
テストの出来具合によっては地獄の補講なんてものも待ち構えているから、怖すぎて震えてくる。
やだやだ。理系苦手なんだよなあ…
化学の人、記述式ばっか出してくるし。
そういえば、この前の中間も結構危なかったんだっけ。
…あー、ほんとどうしよ。ちゃんと勉強しなきゃだ。
涼「A」
「……ん?あ…涼介、」
そうやって憂鬱な未来にうんうんと頭を悩ましていると。
突然横から名前を呼ばれ、反射で顔を向ければ。
気づかないうちにすぐそばで立っていた涼介の姿が目に入る。
いつの間に。なんの用だろう。
そんな疑問が頭をよぎるけど、彼の手に握られた1枚の紙を見てすぐ納得した。
「今日のメニュー表?」
「ん。さっき顧問とすれ違って、ちょうどいいからAに渡してくれって」
人使い荒いよなあ、ってため息吐きながらプリントを渡される。
「あー…お疲れ。持ってきてくれてありがと」
その疲れ果てた表情を見てなんとなく察した。
あの暑苦しい顧問のことだから、廊下でたまたますれ違った涼介にウザがらみしたんだろう。
サッカー部員はいつも餌食になっていて、見かける度にかわいそうだなー…って遠目で。
目が合うとみんな助けてって顔を向けてくるんだけど。わたしも巻き込まれたくないから、ごめんって手を合わせてその場から逃げてるんだよね、
捕まって、嫌々対応している涼介の姿を想像すると思わず笑ってしまいそうになった。
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作者名:やぎ | 作成日時:2024年3月7日 15時