キセキ (ページ9)

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Aside

FNS歌謡祭の第一夜が終わった。私は第二夜も出演して、新曲の『未完成』と千と千尋の神隠しの舞台で千尋役を務めさせていただくことから、『いつも何度でも』で木村弓さんと上白石萌音さんとコラボすることになっている。

ウエスト・サイド・ストーリーのTonightで私がマリア役、大志がトニー役。昔から私達はいろいろな曲をデュエットで歌うことが多かった。特にディズニー。それこそ美女と野獣とか、ホール・ニュー・ワールドとか。

だけど、私の妊娠が分かったときからそういう仕事は出来るだけ受けないようにしてもらっていた。必死だった。向こうに迷惑をかけないように、大志と風歌の事を隠し通してきた。

ジャニーさんにも言われた。

「YOU、頭はいいのにおバカだね」

だって、これ以外に方法が思いつかなかった。
双子の存在が世間にしれたら、私も大我も、下手したら大我の家族も、バッシングを受けることになる。それなら、大我にも報せないで私だけがバッシングを受ければいい。そう思った。

「お疲れさまでした」

そう声だけかけて、家に帰った。
テレビを点けて、録画してあったFNS歌謡祭を見る。

『For here you are.
　And what was just a world is a star 』

『Tonight, tonight,
　The world is full of light,』

『Tonight.』

自分の右手を見た。まだ大我の温もりが残っている気がする。
画面の中にいる私達。

これはマリアなのか、
それとも京宮Aなのか。

「もう、どうでもいいや」