キセキ (ページ8)

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風歌side

今、テレビにはママが映っている。

ふーと大志はママに仕事があるとき、お爺ちゃんの家かママの知り合いのふっかさん、照兄さん、高地おじさん、阿部ちゃんのところに預けられる。お爺ちゃんの家では、お婆ちゃんとテレビを見ることが殆どだ。今も、ママが出ているテレビを見ていた。大志はもう寝ちゃったみたい。お爺ちゃんはお仕事なんだって。

「ママ、きれい」
「ふーちゃんも、ママみたいにテレビで歌いたい？」
「うん！！」

ママとか高地おじさん、ふっかさんとか阿部ちゃんがテレビで歌っているのを何度も見てきた。お婆ちゃんにママのLIVE映像を見せて貰った事もある。とてもキレイだった。
ふーが知らない顔だった。

「あ、この人」

ママの歌が始まって、一緒に歌ってる人に見覚えがあった。
高地おじさんのメンバーの人だっけ？
二人で見つめ合いながら歌っている。

そこだけ、お城の中で、お姫様と王子様が歌を歌っているような、そんな感じがした。ディズニーの映画の場面なのかな、と思うほどだった。

「ママとこの人、歌上手だね」
「そうね。大我くんとA、ママの歌は人気があったのよ」

お婆ちゃんがそう教えてくれた。確かに、微笑み合うママと男の人は、お似合いだった。

「あ、終わっちゃった」
「年末はね、ママも忙しくなるからね。お婆ちゃんのお家に来る日が多くなるわ。またその時にでも、大我くんとAのデュエットの映像を見せてあげるから」
「やった！楽しみ！」
「ほら、もう寝なさい。身長が伸びないわ」
「うん、Good night！」
「Have a nice dream」

家での挨拶は、英語ですることが多い。ママも小さい頃からそうだったんだって。大人になったら役に立つらしい。

ベッドに入ってシナモンのぬいぐるみを抱えて思った。
テレビで見るママ、ふーと大志のママ。
どっちが本当のママなんだろう。
もし、テレビで見るママが本当のママだとしたら、ふーと大志は邪魔なんじゃないか。

すやすやと眠っている大志が羨ましかった。

※風歌ちゃん、3歳児かと思うほど賢いですが、かなり発育の早い子供ということでお願いします