キセキ (ページ2)

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大我side
朝、目を覚ますと必ず隣を確認する。そんな事をしても誰もいないのに。
俺は話し合うことを放棄したのかもしれない。自分でやり直すチャンスをつぶしたのかもしれない。
自己嫌悪に陥る俺が馬鹿らしく思えて静かに笑った。
もう4年も経つのに、未だに忘れられない俺っておかしいのかな？

「何時だろ……」
時間を見るためにスマホを点けた。ロック画面で俺に笑いかける、一人の女性。SixTONESの元メンバーで、今はソロ活動をしている京宮A。俺の恋人だった人だ。
　一目惚れして、バカレアの時に告白。SixTONESを結成してからは同棲していた。お互い舞台とかで忙しかったように思う。でも、上手くやれていた。そう思うのは俺だけ？
4年前、2017年くらいからだんだんすれ違いが多くなっていって、お互いの悪い部分ばかりが目につくようになってしまった。いわゆる倦怠期ってやつだ。
そんな中、AがSixTONESを脱退してソロとしてデビューすることが決まった。複雑な気持ちだったけど、みんなでデビューのお祝いをしようとした。でも、断られた。デビューしてしばらく経ってから、Aが引っ越すことになったので、俺も実家に戻った。事実上の破局。
俺の親とAの親は仲がよかったので、俺らのことを心配してたみたいだ。電話で話しているのを、何度か聞いたことがある。
あれから、俺とAは一切話していない。同じ仕事が回ってくることはないし、事務所やテレビ局ですれ違っても声はかけない。というか、かけられない。向こうから、こう、俺を拒絶するようなオーラが出ている。俺、何かした？
ストーカー被害にあってたみたいで、連絡先も変えたらしい。今の連絡先はSixTONES全員が知らないらしい。意外だった。Aがよく頼ってた高地すら知らないなんて。でも、俺だけじゃないということが分かって安心もした。

いつまでも未練タラタラのままだ。忘れることなんてできない。

「会いたいな……」

そんな声は、俺以外誰もいない部屋に吸い込まれていった。
俺はもう一度やり直したい。この気持ちが伝わればいいのに。ホーム画面にはAと寄り添って幸せそうに笑う俺。
二度寝しようと、スマホを置いて頭まで布団を被った。いろんな色の絵の具を混ぜたパレットのような、今の俺の心の中。
全てを振り払うように深呼吸をした。心と違って、体は正直だ。眠りに落ちるのに、そんなに時間はかからなかった。

ねえ、A。俺は今でもAのことが好きだよ。