57話「そして彼女は気づいた。ババババーン」 ページ20
「唯、人・・・」
奈「え、誰?Aの知り合い?」
奈津の質問に答えることもできず、ごくりと唾を飲み込む。
混乱と恐怖が入り混じる頭の中を整理しようと試みるが、うまくいかなかった。途方もない絶望に襲われる。
「どうして、ここに・・・」
唯 「どうしてって、決まってるだろう」
そういって頬を緩めた唯人は、「Aに会うためならなんだってするって言っただろう」
Aは現実から逃げるように、強く目をつぶってかぶりを振った。
「なんでっ・・・おかしいよ、唯人!こんなの、間違っ」
唯 「間違ったのはAだろう」
「・・・え・・・」
急に低くなった声に鋭く遮られ、思わず息を止めた。
ゆっくりと唯人を見ると、さっきまでの甘い笑顔が消え、氷のように冷たい目が、Aを見据えていた。
唯 「何も言わずに去っていって・・・会えて嬉しいのは俺だけなのかな?Aは喜んでくれないんだね」
「それは・・・」
会いたくなかったから。ずっと思っていた言葉が、喉に詰まって消える。
もし、あの時に戻れたら・・・?
私と、水城と、唯人。三人で笑い合っていた日々が、もう一度やってくるのなら?
そんな考えがよぎって、ぐっと手を握りしめた。
唯 「ねえ、A。俺のモノにならなくてもいい。俺だけのモノじゃなくてもいいから、隣にいてほしい」
ここで頷けば、楽になれる?
今の苦しい時間から抜け出せる?
背負ってきた後悔と自己嫌悪は、あまりにも重かった。これを降ろせるのなら、あるいは・・・
奈 「Aッ!!」
はっと顔を上げると、眉を吊り上げた奈津が、悔しげに私を睨んでいた。
奈津は唯人を指差し、吐き捨てるように、「こいつ、何言ってんだよ!?」
奈 「おかしいだろ、なんだよ、間違ったって!!
間違ってるかどうかは、Aが自分で決めることだろ!!」
そう叫び、唯人につかみかかった奈津を止めることもできずに、呆然と立ち尽くす。
あの日のことは、ただ、失敗した、間違えた、そう思って、後悔だけを何度もしてきた。
・・・でも、そうか。
Aは立ち上がり、奈津に衿をつかまれている唯人に、正面から向き直る。
「・・・ごめん、唯人」
後悔してきたことを活かす時が、今なのかもしれない。
私自身が、大切にしたいもの。守りたい日常。
今は、たくさんある。
「──私は、今の場所にいたい」
逃げたりしない。
あの日の間違いは、もう二度と繰り返さない。
番外編・お正月企画「諏訪くんは既読しない」→←56話「帰り道にご用心」
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あかり(プロフ) - 京さん» いやほんとに、作者自身も唯人くんのキャラ変に恐怖を感じております…。考えてもいない展開に進んでて作者もびっくりっす←ありがとうございます!冬休みなんで今こそ亀更新を改善しようと試みております!! (2018年12月27日 12時) (レス) id: 8b1d55c97a (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - 何!?もうこわい!唯人君どうしたん!?ストーカー通り越してサイコストーカーやで!?((失礼しました。あまりの変化ぶりにちょっとリアルでいそう…。と思ったのでつい((宮古君のほうも楽しみですねぇ!更新頑張ってください! (2018年12月27日 9時) (レス) id: abb6f0cd00 (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - まひろさん» ありがとうございます!宮古くんPartの方が明らかに長いですねすみませんんん(( (2018年12月11日 22時) (レス) id: 8b1d55c97a (このIDを非表示/違反報告)
まひろ - リク早速書いてくださりありがとうございます!宮古くんの裏?の本音みたいなのが見れてすごくよかったです!!ありがとうございました(´ω`) (2018年12月11日 7時) (レス) id: e1cfe1ea92 (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - 夜さん» リクありがとうございます!それはもう、諏訪くんは手塩にかけてかわいさを磨いております!←諏訪&主人公でちょっとむずっとする関係のふたりの日常で書かせていただきます!)^o^( (2018年12月10日 21時) (レス) id: 8b1d55c97a (このIDを非表示/違反報告)
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