15話「テストは敵か味方か」 ページ16
7月に入り、少しずつ教室が夏服へと変わりつつあった。
そして、近づくのは期末試験。
私はそこまで勉強が苦手ではないが、古文だけはいつも悩まされていた。
編入試験の時も、古文でつまずいた。
他でなんとか補ったものの、高校ともなるとそうはいかなくなってきた。
「えっと、ここがこう訳されるから・・・あれ?」
放課後教室に残って教科書を開くが、なかなか進まない。
握る手のシャーペンの芯が折れた頃、「二ノ瀬?」と声がかかった。
振り返ると、扉のところに諏訪くんが立っていた。
「諏訪くん。どうしたの?」
諏 「二ノ瀬こそ、どうしたんだ。今日は稽古終わっただろ?」
「テスト勉強。家だとあんまりはかどらないから」
頷きながら、諏訪くんは歩いてきて自分の席の椅子を引いた。
私はちょっと驚いて固まる。
「・・・どうしたの?忘れ物?」
諏 「見る。稽古の礼だと思ってくれればいいから」
机に広げられた教科書を覗き込み、「どこ?」と尋ねてくる。
「え、いいよそんな。悪いし」
諏 「いいから。二ノ瀬の元気がなくなったら俺が困る」
「えっ・・・」
それってどういう意味?
言葉が出てこなくて、ポカンとしてしまう。
諏 「いつも、無理させて悪い」
・・・あ、そっか。稽古ができなくなると困る、って意味か。
まぎらわしい言い方した諏訪くんも諏訪くんだけど、何を勘違いしてるんだ、私は。
「いや、別にそれはいいんだけど・・・本当に見てもらっていいの?」
諏訪くんは毎回テストで1位の成績を残す優秀者。
見てもらえればすごく助かる。
諏 「当たり前だ」
「・・・ありがと」
ちょっと迷ってから言ったその言葉に、諏訪くんの目が少し見開く。
「どうかした?」
諏 「いや・・・なんでもねえ。ほら、やるぞ」
「うん。お願いします」
頷いた諏訪くんの耳は、心なしか赤く染まっている。
どうしたのかな?もしかして、照れてる?
・・・ちょっとかわいいかも。
「ぷぷっ」
諏 「?なんだ」
小首をかしげた諏訪くんがやっぱり面白くて、ちょっとふざけてみる。
「"いや、なんでもねえ"」
諏訪くんは数秒固まってから、「ふはっ」と吹き出した。
諏 「・・・変な奴」
古文は、平均点を20点上回った。
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あかり(プロフ) - ISLAYさん» ありがとうございます!!そうなんですよー!主人公よりかわいくあれ!と思って書いております←(^^ゞ (2018年11月26日 18時) (レス) id: 8b1d55c97a (このIDを非表示/違反報告)
ISLAY - 諏訪くんって、可愛いですよね。 (2018年11月26日 9時) (レス) id: a0fdea4e50 (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - まひろさん» ありがとうございます^^イラスト集が完結した分、こちらの更新が亀にならないよう気をつけていく所存です!← (2018年11月24日 14時) (レス) id: 8b1d55c97a (このIDを非表示/違反報告)
まひろ - とっても面白いです!!イラストが完結してしまったのは寂しいですが、小説も応援しております!!∩^ω^∩ (2018年11月24日 10時) (レス) id: 117c5ce46f (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - かぐやさん» ありがとうございます!!諏訪くん私も好きなんですよ~。ちょっと、いやかなり私の好みが組み込まれてます笑 (2018年10月28日 21時) (レス) id: 8b1d55c97a (このIDを非表示/違反報告)
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