31話「決戦は、迫りつつ」 ページ33
唯 「・・・謝らなくていいよ。無理矢理来させて、ごめん」
「無理矢理じゃないよ」
とっさに、そう言っていた。
無理矢理は、違う。決してそんな風には思ってない。
「唯人こそ、謝るのは違うよ」
唯 「そう、だね」
苦しそうに笑う笑顔さえも綺麗で、それを見ているのが辛い。
涙を必死に押し込めて、何度目かも分からない問いを自分に投げかける。
どうして、こうなってしまったんだろう。
唯 「・・・じゃあ、俺は行くよ。来てくれて、ありがとう」
唯人は、静かにそう告げて、教室から去った。
間もなく、私も歩き出す。
帰ろう。そして明日、水城と話そう。話さなきゃ、いけない。
決意を再び固めて、教室を出た時だった。
「 「好きなんだよ!!!」」
廊下に響き渡る、よく通る声。
その声には、聞き覚えがあった。いや、違う。いつも、聞いていた。
廊下の曲がり角から、犬のキャラクターのキーホルダーが揺れて見えている。
静かに、息を止める。
唯 「なんで・・・」
あれは、あのキーホルダーは・・・私が、誕生日に親友に渡したものだ。
水 「隠してて、ごめん・・・っ」
水城に、あげたものだ。
どうして、水城がここに?帰ったはずじゃ・・・考えて、最悪の予想にたどりつく。
まさか、さっきの話を・・・
水 「唯人が、Aを好きなのは分かってる」
「!」
・・・ああ、どうしてこうも全部うまくいかないんだろう。
水 「けど、なんもしないのって、らしくない、じゃん?だから、言っただけでさ・・・っ言った、だけでっ、」
見えなくたって、彼女が泣いているのが分かる。
どうしようもなく胸が締め付けられた。
唯 「ごめん、俺・・・Aが、好き、なんだ」
答える唯人の声も、辛そうだった。
水 「・・・っう、ん、分かってるから、大丈夫。はっきり言ってくれて、ありがと」
涙にかすれたその声に、私まで涙がこぼれそうになる。
目に力を入れて、踏ん張ろうと、足を動かした瞬間、扉に足が当たり、
ガタッ。
大きな音をたてた。廊下に響く。
・・・まずい。
これを聞いていたなんて、ばれてしまったら・・・
唯 「A・・・」
水 「ど、して・・・」
呆然としたように私を見るふたりに、答えられる余裕などあるはずがなかった。
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あかり(プロフ) - ISLAYさん» ありがとうございます!!そうなんですよー!主人公よりかわいくあれ!と思って書いております←(^^ゞ (2018年11月26日 18時) (レス) id: 8b1d55c97a (このIDを非表示/違反報告)
ISLAY - 諏訪くんって、可愛いですよね。 (2018年11月26日 9時) (レス) id: a0fdea4e50 (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - まひろさん» ありがとうございます^^イラスト集が完結した分、こちらの更新が亀にならないよう気をつけていく所存です!← (2018年11月24日 14時) (レス) id: 8b1d55c97a (このIDを非表示/違反報告)
まひろ - とっても面白いです!!イラストが完結してしまったのは寂しいですが、小説も応援しております!!∩^ω^∩ (2018年11月24日 10時) (レス) id: 117c5ce46f (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - かぐやさん» ありがとうございます!!諏訪くん私も好きなんですよ~。ちょっと、いやかなり私の好みが組み込まれてます笑 (2018年10月28日 21時) (レス) id: 8b1d55c97a (このIDを非表示/違反報告)
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