# 【月の涙】 ページ30
階段を下り、リビングに向かう。
三 「三日月さん、待たせてごめん・・・」
扉を開ける。
・・・ソファーに座る二人の女子。
そう。
もうこの時点で、遅かったのだ。
三 「し、き姉・・・」
ゆっくりと、"姉"と"そうじゃない女の子"が振り向く。
四 「あ、三葉・・・」
祈 「あ、三葉さん。すみません、お家の中にまでお邪魔して。お姉さん、美人ですね」
"お姉さん"。
事実なのに、その言葉が妙に胸を刺した。
四 「・・・じゃあ、私行くから。これからも、三葉のことお願いね」
祈 「いえそんな、こちらこそ!」
最後に少し笑って、四樹姉は腰を上げた。
呆然とする俺は、
無言で隣を通り過ぎる四樹姉を、止めることはできない。
Aが入れ違いにリビングへ入ってくる。
「あれ、四樹姉出かけるの?」
四 「そ。・・・友達と」
「ホントに〜?友達〜?」
四 「うっさいな。行ってくる」
扉が閉まる音。
「あれ、三葉兄お客さん?・・・三葉兄?」
・・・動かなきゃ、怪しまれる。
分かってる、のに。
祈 「三葉さん?」
体が、動かない。
リビングの真ん中で直立したまま、俺は思う。
・・・やっぱり、諦められてないんだ。
いつまでも、引きずってる。
「私・・・行くね?」
Aの声と共に、再び扉が開閉される音が響く。
もしかしたら、気をきかせてくれたのかもしれない。
・・・もう、ホント何度目だよって感じだけど、
三 「情けなっ・・・」
おい、嘘だろ?
そこで泣くのか俺?
祈 「み、三葉さん・・・っ?」
ほら、三日月も困ってるじゃん。
泣くなって、
ホントもう・・・
祈 「・・・っ三葉さん、三葉さんはカッコイイと思います」
三 「・・・え、」
祈 「三葉さんは、情けなくなんかないです」
三 「み、かづきさ・・・」
適当なこと言ってんじゃねえよ、とか、
俺のこと何も知らないくせに、とか、
言いたいことはたくさんあった。
・・・けど、今だけは・・・
三 「くっ・・・っ!」
今だけは、泣いてしまえ。
・・・明日からまた、普通の"兄妹"をやるために。
2人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ