#A【恋】 ページ18
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千 「これで最後にするから──・・・もう一度だけ、聴いてほしい」
赤い夕日が雲に隠れ、視界が暗くなる。
千尋の表情が、見えない。
何を考えているのか、分からない。
千尋、私たちは、どこで間違えたんだろうね。
千 「俺は、Aのことがずっと好きだった」
さわ、と風が揺れる。
千 「漫画が好きで、吹奏楽が好きなAが。
吹部やってる時の、Aの顔も、おいしいもの食べてる時の笑顔も、全部全部、大好きだった。
親が再婚して、義理の兄姉ができたって聴いて、心配してた。
最初は俺も、Aのために心配してるんだって、思ってた。
・・・けど、違った。
Aのすぐ側に、血の繋がってない男がいるってことが、俺は怖かった。
とんだお門違いだって、分かってはいたんだ。でも、そういうんじゃないんだよ。
・・・俺は結局、どんなことがあっても、お前が好きなんだ」
なんて答えればいい。
こんなに真剣に目を向けてくれる人に、私は何も返せない。
そのことが、どうしようもなく悔しい。
情けない。
千尋が、笑んだ気配がした。
千 「・・・知ってる。知ってた、Aが恋を知らないことなんて。
だったら諦めろよって話だよな。
けど、ごめん。
・・・俺は、お前を諦められない。
諦めたくないんだよ」
「・・・うして、そこまで・・・」
千 「好きなんだ」
「・・・っ」
笑顔、下手くそだよ。
そんな、表情を浮かべて。
千 「苦しいくらい、愛してるんだ」
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