# ページ14
千 ｢遅くなって悪いな｣
｢大丈夫｡こっちも今来たとこ｣
千 ｢そうか｣
会話が途切れた｡
いつかの空き教室ではなく､今いるのは私たちのクラスだ｡
｢･･･話って？｣
千 ｢──あのさ､｣
千尋の言葉が一瞬詰まる｡
迷うような沈黙の後､ゆっくりと唇が開かれた｡
千 ｢･･･あいつと･･･朝比奈って奴と付き合ってるのか？｣
｢うん｣
千 ｢！｣
千尋の表情に分かりやすく動揺の色が走った｡
｢つきあってるよ｡･･･お試しで｣
千 ｢は？おため､し？｣
｢うん｣
頷くと､千尋は数秒固まってから深く息を吐いた｡
千｢なんだよ･･･って､そうじゃなくて､､､どうして､あいつなんだよ｣
｢どうしてって･･･｣
聞かれて､気づく｡
どうして私は､恋を知るための相手に､朝比奈を選んだのか｡
｢･･･そんなの､分からない｣
千 ｢俺じゃダメなのかよ｡その相手はっ･･･！｣
｢！？｣
そんなこと､考えたこともなかった｡
でも､言われてみれば確かにそうだ｡
私はなぜ､朝比奈にしたんだろう？
｢わ､かんない･･･っ｣
千 ｢！･･･悪ィ｡八つ当たり､だな｡俺が提案しなかったのが悪かったんだし､お前は悪くねぇのに｣
｢違っ･･･｣
千 ｢･･･ごめん｡俺､もう行くわ｡わざわざ呼び出したりして､迷惑かけたな｣
｢待って､ちひr((ガラッ
朝 ｢先輩っ！！｣
ドアを開けて入ってきたのは､朝比奈だった｡
｢朝比奈？なんでここに･･･｣
朝 ｢先輩っ､どうして引き止めるんですか！？俺は･･･俺はっ･･･｣
苦しそうな表情で､朝比奈が距離を詰める｡
何も言えずに固まる私の代わりに､千尋が朝比奈の肩をつかんだ｡
千 ｢おいっ､お前･･･｣
朝 ｢なんなんですか､廣瀬先輩はっ！｣
千 ｢！｣
朝 ｢フラれたんでしょう！？A先輩につきまとわないでください！･･･俺の方が､先輩を想ってますっ！｣
千 ｢･･･っそれはこっちのセリフだ！俺は･･･俺は､ずっと･･･っ｣
千尋と朝比奈が向き合って睨む中､私は一人､少女漫画の奪い合いの場面はこんな感じなのかと､冷めたことを考えていた｡
･･･どうしたらいい｡
私は･･･どうしたらいい｡
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