# 【月の夢】 ページ27
祈 ｢三葉さんは､部活やってるんですか？｣
三 ｢一応､サッカー部を｣
祈 ｢へーっ｡カッコイイんですねえ｣
三 ｢いや､その･･･｣
ちょっと天然が入っているのか､どうも話が変な方向に向かっていく｡
三 ｢み､三日月さんは？｣
声が震えるのを自分で感じながら､情けないと心の中でうめく｡
祈 ｢私は吹奏楽で･･･クラやってるんです！えっと､ほら､こーやって吹くやつなんですよ｣
そういいながら指をリコーダーのように縦に揃える三日月さん｡
Aの影響でクラリネットぐらいは知ってるが､クラと略されると一瞬迷う｡
･･･ほんとに天然入ってるんだな､この子｡
三 ｢俺の妹もやってるんだ､吹奏楽｣
祈 ｢そうなんですか！？楽器は？｣
三 ｢えっと･･･トロンボーン｣
祈 ｢ボーンですかぁ！カッコイイですよね！｣
三日月さんは手をトロンボーンの構えにして､前に出したり戻したりする｡
そうこうしている内に､目の前に自宅｡
三 ｢あ､俺ん家ここなんで｡多分兄貴いると思うんで､車頼んできます｡待っててください｣
祈 ｢あ､ありがとうございますっ｣
礼儀正しく頭を下げる三日月さん｡
本当にいい子なんだな､と思わず頬が緩む｡
玄関を入り､三日月さんにちょっと待ってて､と断ってから､２階の五樹兄の部屋に向かう｡
階段を上りきり､角を曲がった時だった｡
四 ｢三葉､遅かったじゃん｣
今一番､会いたくない人がいた｡
･･･四樹姉に､あの子を見られたくない｡
情けなくも､そう思った｡
優しく笑う四樹姉に､
俺は無言で通り過ぎる｡
･･･言えるわけがない｡
｢どうしたら四樹姉を忘れられるんだ？｣なんて､
言えるはずがない｡
言ってもきっと､また同じ後悔をするだけだ｡
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