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なんとか起きあがろうとしたシグマの前に、一人の影が歩いてきた。
それは、花だった。
開けた天空カジノに咲く、一輪の麗しき大輪の華であった。
白い日傘に、赤を基調としたギンガムチェックのブラウスにスカート。
日傘の影から覗かせるのは、癖っ毛の緑色の髪だ。
“命が惜しくばすぐに逃げろ”
“絶対に怒らせてはならない”
“そのうちに秘めた実力の底は計り知れない”
“彼女の本気を見たものはいない”
“本気で怒らせれば山一つが吹き飛ぶ”
“幻想郷で唯一の枯れない花”
幻想郷で生きとし生けるものにおいて
必ず守らねばならぬ
まことしやかに囁かれるそれらは、風見幽香という女性のこと。
「あら、いらしたの?
ごきげんよう、今日も良いお天気ね」
その花は、ゆったりと鎌首をもたげてシグマを見下ろす。
彼女は、シグマの寝食削って覚えたカジノの顧客欄にはなかった。
ならば、彼女は一体誰だ?
「───貴様の名は?」
「あら、礼儀がなっていないのね。
相手に名前を訊くときは自分から。常識よ」
「………これは失礼した、私の名はシグマだ」
「風見幽香。よろしくお見知り置きを」
どこか耽美で空虚な時が流れる。
ただし、話して居る場所が半壊した天空カジノの中央エントランスということを除いては。
「………ここを襲った理由は?」
「てっきり貴様がやったのか……だなんて意味のない質問をすると思っていたから予想外だわ。
ただ単に、自分に利益があると思っただけよ」
傘をくるくると回しながら幽香は言った。
どこか浮世離れした彼女の態度に、思わず我を忘れそうになる。
「ッここにいた人はどうした!
客や従業員はどこにやった!」
声を荒げたシグマに幽香が煩わしに眉を顰める。
「五月蝿いわね。
ちゃんと無事に、夢の世界で息をしてるわ」
「夢の世界…?」
さっきから訳の判らない情報が雪崩のように押し寄せてくる。
シグマはキャパオーバー一歩手前であった。
「まあ、あなたみたいに頭の硬そうな方にはお話ししても意味はないし、言ったところであなたは直接的に関わる訳じゃないもの。
そうね、わざわざ襲った理由としては───舞台装置として、かしら」
幽香は数歩歩いたあと、至近距離でシグマの顔を覗き込んだ。
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颯貴@東方&文スト大好き人間(プロフ) - 四葉のコトリさん» コメありがとうございます!幻想郷vsヨコハマは私の自己満妄想なので、喜んでいただけてとても嬉しいです…。稚拙な素人ではありますが、これからも読んでいただけると嬉しいです!! (2022年1月14日 19時) (レス) id: 61e081417a (このIDを非表示/違反報告)
四葉のコトリ(プロフ) - 初コメント失礼します!Pixiv見てたら見つけたので来ました!幻想郷をヨコハマが戦うなんて夢のようです!更新頑張ってください!応援しています!文章とても分かりやすいですね!長文失礼しました。 (2022年1月13日 2時) (レス) @page28 id: 9e21ae10ce (このIDを非表示/違反報告)
颯貴@東方&文スト大好き人間(プロフ) - ねこルージュさん» おk、すまねえ…。できたら教えてちょ (2021年12月19日 23時) (レス) id: 61e081417a (このIDを非表示/違反報告)
ねこルージュ - あ、ビビッドアーミーってやつやってるんだけど、その時の名前がこちらなのでyunanaからこれにかえま〜す (2021年12月19日 21時) (レス) id: f9dc735e37 (このIDを非表示/違反報告)
ねこルージュ - ありがとありがと。小説は少々お待ち下さいね〜。ツイステ六章で推しが弱るシーンを本能のままに書きなぐってるとこです…では、かけたら言うわ。 (2021年12月19日 21時) (レス) id: f9dc735e37 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯貴@東方&文スト大好き人間 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/MizuhasiSatuki/
作成日時:2021年9月28日 19時