【文スト×東方】第三篇 この余白はそれを書くには狭すぎる。

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───この30階建以上の高層ビルの最上階にして、異能蔓延るヨコハマの表を統べる軍警本部の最深部。

我が御(み)国のお歴々が、海外の国の上層部と超機密情報を取引するためにも使われる会議室。



最上階に誂えられたその会議室(へや)は、現在使用中であった。



「(今日の巡回を言った上司の顔が思い浮かぶ)」



そのうち、最上階を巡回していたひとりの警備員は豪勢な会議室の扉を横目に見た。

いつも傲慢で人をこき使うような上司が、初めて顔を真剣な表情にしたとき。

本来ならば愉悦を感じるところだろうが、その時は本能的に感じる危険の前触れに口が開かなかった。



「(風の噂によれば、ここでは世界的に有名な日本人がいるとかなんだとか)」



毎日毎時刻毎分情報がしっちゃかめっちゃか入ってくる軍警での噂など、信憑性はとっくに理解している。

だが、それと同時に火のないところに煙はたたぬとも言う。

噂に噂が重なっているせいか、その会議室には特一級異能力者がいるだとか、時計塔の従騎士がいるだとか根も葉もない噂が蔓延していた。



その中でも専ら有力と囁かれているのは “ 宇宙 ” に関連する人がいるんじゃないか、というものである。
宇宙だなんてなんて突飛な、と罵る気持ちもわかるが、その噂には根があった。





─── “ 月と異能は関連している ” 。先月、異能大国である英国が発表した内容だ。
……当然、数少ない異能の存在を知る界隈に、大きな激震が走った。

曰く、月を見ることで発動する異能があるということ、それはどれも極めて強い効果を持っているということ。

曰く、満月の時ほど全ての異能の効力が上がるということ。



曰く、月の裏側に異能力のルーツとなる物が存在するということ。





それらの論文は今までの異能の見解を大きく覆すものであったと同時に、今まで個々に散らばっていて不明だった事実を一つに収束したものでもあった。

当然、詭弁だの捏造だのひどい批判も飛び交ったが、日本や他の異能大国はこれを好意的に受け止め、月に関して全面的に調査すること、それに関して異能の研究が進んでいる各国との協定を結んだ。

千里眼の異能力者、遠く離れた生命体を見つける異能力者、月を異能発動の鍵とする異能力者らが世界中から集められ、大々的な捜査が始まった。
結果、一ヶ月で一つのことがわかった。





月の裏で新たな生命体が活動し、独自の生態系を築き上げている。





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