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こつこつと冷たく音が響く。
ここの支配人の靴の音が、長い廊下にこだまする。
彼は、豪勢な扉の前でぴたりと足を止めた。
そして、扉の横に取り付けられた液晶に顔を向ける。
銀髪の長く切り揃えられた髪が静かに靡く。
彼の髪と同色の瞳を、虹彩認証の液晶が捉える。
カチリと音を立て、扉の鍵の開く音がした。
静かに扉を開ければ、中のカジノ会場中の視線が、ここの支配人である彼に向いた。
彼はそれにも怖じけることなく、胸を張って悠然と歩き出した。
「失礼、彼は?」
「えっ、知らないのでして!?
ここの支配人のシグマ様ですわ」
「労働環境もホワイト」
「手腕も一流」
「この広大なカジノを一人で取り仕切るリーダー」
「彼の二万人近い客の名前と特徴を全て把握しているとか」
「正にカジノ支配人となるために生まれてきた男」
彼の周りでこそこそとまるで花を舞う蝶のように噂話が飛び交う。
彼───ここ、天空カジノの支配人シグマは、一番中央のディーラーの前で足を止めた。
「遅れてすまなかった」
「いえ、私が手が空いていなかったというだけですのにわざわざお越しいただきありがとうございます」
「いや、私もやることがなく暇だったからな」
そう当たり障りない会話を二人は続ける。
「それで、例の件の資料はどこだ」
「それでしたらこちらに」
あたかも今思い出したかのように言ったシグマに、ディーラーもぽんと手を叩き机から資料の束を手渡した。
そのままシグマが紙をぴらぴらと捲る。
「ふむ、判った。
この案は私の一任で通そう。
手続きに関してはお前に指揮をとってもらう。頼りにしている」
「承りました」
そして再度シグマがディーラーに束を返した。
それを恭しくディーラーが受け取った。
用事はそれだけで済んだとでもいうようにシグマは踵を返す。
周りの視線を浴びる中、シグマはそのまま去っていった。
これらの行為に、何処か味気なさを感じられたのはごく一部の人のみだった。
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颯貴@東方&文スト大好き人間(プロフ) - 四葉のコトリさん» コメありがとうございます!幻想郷vsヨコハマは私の自己満妄想なので、喜んでいただけてとても嬉しいです…。稚拙な素人ではありますが、これからも読んでいただけると嬉しいです!! (2022年1月14日 19時) (レス) id: 61e081417a (このIDを非表示/違反報告)
四葉のコトリ(プロフ) - 初コメント失礼します!Pixiv見てたら見つけたので来ました!幻想郷をヨコハマが戦うなんて夢のようです!更新頑張ってください!応援しています!文章とても分かりやすいですね!長文失礼しました。 (2022年1月13日 2時) (レス) @page28 id: 9e21ae10ce (このIDを非表示/違反報告)
颯貴@東方&文スト大好き人間(プロフ) - ねこルージュさん» おk、すまねえ…。できたら教えてちょ (2021年12月19日 23時) (レス) id: 61e081417a (このIDを非表示/違反報告)
ねこルージュ - あ、ビビッドアーミーってやつやってるんだけど、その時の名前がこちらなのでyunanaからこれにかえま〜す (2021年12月19日 21時) (レス) id: f9dc735e37 (このIDを非表示/違反報告)
ねこルージュ - ありがとありがと。小説は少々お待ち下さいね〜。ツイステ六章で推しが弱るシーンを本能のままに書きなぐってるとこです…では、かけたら言うわ。 (2021年12月19日 21時) (レス) id: f9dc735e37 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯貴@東方&文スト大好き人間 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/MizuhasiSatuki/
作成日時:2021年9月28日 19時