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紫の真剣な目線がすみかを射止めて動かさない。
すみかはそっと地面へ俯いた。
彼女の下で長い蟻の兵団が進んでいく。
蟻が一匹残らず去った頃。
「…………私は、戻りたくないです」
彼女の言葉に紫はゆっくり瞬きをして続きを促す。
「私は、ここに入るためにあらゆる物を捨てました」
「今更金目当ての輩に渡す物などありません」
「此処が、幻想郷が。私の
すみかの瞳に夕焼けが映り込む。
彼女の瞳は、どこまでも真摯な夢を照らしていた。
「…………それが貴女の口から聞けただけで十分よ」
紫はうすら笑みを浮かべ、くるりと回れ右をした。
「……?」
「安心なさい、貴女の家は私が守ってみせる」
数歩歩いた紫は、ゆっくりと振り返る。
「幻想郷は、全てを受け入れますもの」
「此処は、どこまでも残酷な場所ですから」
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作者名:颯貴@きっちょー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/MizuhasiSatuki/
作成日時:2021年7月18日 17時