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その、刹那。
背後で蠢いていた金色夜叉が刃を振り上げる。
咄嗟に八千慧は、亀甲柄の盾型弾幕で応戦した。
空間を埋め尽くすほどの斬撃。
ヒビの入った盾に強化のために霊力を注ぎながら、わずかに舌打ちする。
「おや………さすがですね、貴方の異能は。
予想外ですよ」
「その日和な仮面が取れぬのになにをほざくか」
互いに余裕を崩さず、優雅に会話を続ける双方。
霊力の無駄だと理解し、八千慧は防御作戦から特攻へと切り替えた。
そのまま盾を夜叉の方へと押しやり、一気に跳躍する。
突然の攻撃にも紅葉は慌てず、夜叉を的確に動かし、盾を砕いて八千慧へと刃を向けた。
───【吉弔】トータスドラゴン───
八千慧の周りに魔法陣が展開され、そこから弾幕が吹き飛ぶ。
光速で飛ぶ弾幕を浴びた夜叉は、それに屈することなく全てを切り刻んだ。
「おやおや……微粒子でさえも刻めるとは」
感心したように呟く八千慧。
そしてちらりと窓を見る。
「太陽……あと少しかしら」
「安心せい、楽に逝かせてくれるわ」
途端、よそ見をしていた八千慧に、電光石火の斬撃が降りかかった。
「ッ、がっ!」
咄嗟に盾弾幕を展開するも、光速の太刀に後出しは敵わぬ、諸に一閃を腹部に食らった。
「……迂闊でしたね、一発持っていかれる、と、は………」
腹部に手を当て、うなるように呟く。
だがその顔に、余裕はまだ残っていた。
「まあでも、こちらも潮時です」
ニヤリと笑った八千慧に、紅葉は強い悪寒を覚えた。
その瞬間。
「っ!!」
八千慧の配下のカワウソ霊が、紅葉の首に
かみついた。
「ッ…夜叉!」
主の命令に、異能は主人にかみつくカワウソを叩っ斬った。
「っまさか、罠を張っていた、とは…」
だくだくと流れる血が紅葉の着物を濡らしていく。
紅葉は首を手で押さえながら絞り出すように呟いた。
「ええ、ちょうど太陽がここに差す時に襲うようにと部下に言い聞かせました。
敵陣突入となれば、何があるかは判りませんから。
あなたと違って、私の部下は優秀なのですよ?」
「っ、卑劣な……!!」
「ふふ、搦手こそが最短最良としている私としては褒め言葉極まりないですね」
涼しい顔で、立膝をつく紅葉の前へとゆっくり歩を進めた。
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かみつく
噛み付く
神憑く
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作者名:颯貴@きっちょー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/MizuhasiSatuki/
作成日時:2021年7月18日 17時