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鬼形のかたち示せしもの
なにやら、下の方が騒がしい。
首領と執務室で話をしていると、下の方が何やら騒がしい気配を感じる。
「………首領」
ちらりと声をかけると、首領の顔も曇っていた。
「………中也君」
己の名前を呼ばれ、背筋を伸ばす。
「少し様子を見て来てくれ給え。
先ほどから様子を見に行った黒蜥蜴、芥川君、紅葉君と連絡が取れない」
携帯を振りながら俺に命令を課した首領の顔は憂げだった。
ビル最下層である一階二階の襲撃トラブルはよくあることだが、黒蜥蜴や芥川、ましてや姐さんと連絡が取れないとは何事か。
「はい、首領」
俺は静かに一礼した───。
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見張りに軽く挨拶をしてから、昇降機で降りて来た中階層。
そこにあったのは、血と腑のみだった。
呆然として周りを見渡す。
まさか、下部ではなく此処まで荒らされていたとは。
嫌な予感が脳裏を走る。
侵入者は1人だけじゃなかったのかよ!?
駆け足で周りの様子を見渡す。
俺はそこに、信じられないものを見た。
「おい、あね………さん?」
そこにいたのは、血みどろになった姐さんだった。
隣に立つのは、異形の形をした金髪赤目の女。
まさか、コイツが……?
姐さんを……?
静かに理性の緒が切れていく。
姐さん、姐さん、姐さん………。
「あら、人目がつきましたか。
まぁ問題ありません、あとは彼女を殺れ……」
その途端、俺はそいつの腹に拳をのめり込ませていた。
「がっはぁ……!?」
金髪の赤い目が驚愕に見開かれる。
そのまま、異能を発動する。
───【異能力】重力操作───
そして、音速で金髪をふっ飛ばした。
「がほっ」
大きな音を立てて瓦礫が舞う。
重力操作ですぐに後を追った。
だらりと力なく垂れ下がる龍の尾を、容赦なく踏みつける。
「がっ」
苦悶の表情に満ちた金髪。
「答えろ。
此処に来た目的は?」
「言、うわけ……ないじゃッ!?」
途中でセリフを遮り、重力操作で金髪の体を地に押し込む。
「ッ………て、偵察です!
地上の隠密奇襲に優れたマフィアの実力が如何なるものかと──」
「扇動者は?」
「…………」
尚も答えない金髪に苛々が募る。
こんなやつに、姐さんは、ポートマフィアは…。
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作者名:颯貴@きっちょー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/MizuhasiSatuki/
作成日時:2021年7月18日 17時