水溜りに映る景色〜水溜りボンド〜

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「Aちゃん！
ほら、乗って、乗って」

トミーのお母さんが優しく声をかけてくれた。でも、いつも落ち着いていて優しいトミーのお母さんでさえ声色には少し焦りが滲んでいた

『ありがとう。
おばさん……どうしよう』

怖くて仕方ない。カンタは大丈夫なのかな
考えたって考えたって出る訳もない答えを車に乗っている間ずっと探している。
窓の外を見れば当たり前の風景が流れていく。そんなことにやっとのことで現実性を見出していた。

それほどに、私にとっては考えられないような出来事だった



「おい、大丈夫か？
……おい！A！」

ふと気が付けばがっちりと両肩をトミーに掴まれ揺さぶられていた


『ごめん、気付かなかった…』


いろいろ考えすぎて、トミーが私を呼んでいたことにも気付かなかった。

だめだなぁ、私。


「しっかりしろ、な？」

少しひきつった笑顔
トミーだって、辛いんだ。こわいんだ。
そんな、当たり前のことに私は気付けなかった

無理しているのが伝わってくる

何年一緒にいると思ってんの。
作り笑いしてるのバレバレだよ。



『うん、そうだよね』


私が、しっかりしなくちゃ
1番辛くて大変なのはカンタなんだから

「着いたわよ……先行く？
私は車止めてから行くから」

「うん、ありがと。そーする」


『ありがとう……おばさん』


着いたよ、と言われ出てきた大きな大学病院に怖気づいた。こんなに大きな病院、それ相応のことじゃないと運ばれてこないんじゃないの、と。

こわかった。
カンタに会うのが。

どうしよう、こわい。

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