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Aside
お花見に行く日だったはずのあの日から、早2週間。
カンタが記憶を取り戻したからと言って、私たちの関係が大きく変わることはなかった。
カンタの気持ちが、昔のように私に向くことはなかった。
今まで通りに、日常が進んでた。
私の気持ちだけ、置き去りになったまま
あれだけ記憶が戻ってくれたのなら、と願っていたくせに、自分の思い通りにいかないことに”逆に辛いな”なんて思ってしまう自分が嫌だった。
記憶が戻ったことは、嬉しいことのはずなのに。喜ぶべきことなのに。
本当に、私は自己中だ
『トミー遅いね』
「あ、うん、確かに」
なんだかカンタは心ここにあらずな感じで、いつもと違う。ふたりきりというシチュエーションがもうずっと無かったから、変な感じがする。
緊張して、いつもみたいに言葉が出ない。
私ばっかり、こんなに緊張してるのかな
そう考えたらなんだか恥ずかしくて、急に顔に血がのぼった気がした。今まで、ふたりのときどんな話してたんだっけ。
「……あ、トミー遅れるって。なんか、お腹痛いみたいで……あの、あ、今連絡来た」
『え!うそ、どうしよう』
こんなじゃ、ふたりきりでいたらきっと無駄なことを口走ってしまう。
そんな気がした。
『あー……、また今度にする?トミーも万全な状態の方が、』
「待って、せっかくだし一緒に見ない?
……嫌?」
不安げに揺れたその瞳が、私の目を見て離さなかった。いつもだったら、こんなに嬉しいことないのに、カンタから誘ってくれるなんて、ないのに、素直に喜べないのも悔しくて。
断ることもできず、気が付けばうん、と縦に首を振っていた
「良かった、じゃあ行こ」
『うん』
安心したようにふわりと微笑んだカンタはなんだかいつもよりも大人っぽく見えて、より緊張がはしる
今にも心臓が飛び出そうだ
『トミー、大丈夫かな』
「あとからでも来れるといいね」
『うん、そうだね』
どうしても、話が続かない。
桜を見てても、綺麗だと感じられなくて。
『桜綺麗だね』
思ってもいない言葉が口をついて出た。
「満開だなー。
桜って儚いよな、散るの早いしさ」
『うん。だからより綺麗に見えるのかもね』
過去も同じで、思い出が素晴らしいものに見えるのは、今どんなに願ってもその時には戻ることができないから。思い出補正、みたいな。
きっと、それだけ。
自分の言葉に、妙に納得した
『トミーもいたらなんて言ったかな〜』
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春風うた(プロフ) - みんちゃさん» 不定期な更新にも関わらず読んでいただきありがとうございます!できる限り更新できるよう頑張りますので完結までよろしくお願いします! (2019年11月20日 1時) (レス) id: 42376aeff5 (このIDを非表示/違反報告)
みんちゃ(プロフ) - リメイク大変だと思うけど頑張ってください!続き待ってます (2019年11月19日 18時) (レス) id: fd9887635d (このIDを非表示/違反報告)
いちごみるく(プロフ) - 優球さん» ホントですか!?だいぶ違うタイプなので好みかはわからないですが…(汗)ほんとですか!!ありがとうございます…!まだもうすこーし続く予定です! (2017年12月20日 23時) (レス) id: 42376aeff5 (このIDを非表示/違反報告)
優球(プロフ) - あとの数話めっちゃ感動です…(;Д;)(;Д;) (2017年12月20日 23時) (レス) id: a03a532c75 (このIDを非表示/違反報告)
優球(プロフ) - リンクまでご丁寧にありがとうございます!是非見ます! (2017年12月20日 23時) (レス) id: a03a532c75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おもち。 | 作成日時:2017年9月30日 0時