ジンさん、謝らないで ページ8
バーバラを待つ間、この世界での常識や西風騎士団についてをガイア先輩から聞き出した。
ある程度ならゲームから知識は得ているが、彼らにとっては話した覚えのないことだろうから、ある程度の事はこの世界の人たちから聞いておかねばならない。
はあ…。「ある程度」の知識を聞いたからと安心して気を抜かないようにしないと。
聞いていない知識まで喋ってしまったら終わる。
バーバラはてっきりリサ辺りを連れてくるのかと思ったが、ご丁寧にもジンを連れて帰ってきた。
「…あなたがガイアに助けられたという異邦人か。苦しい思いをさせてすまなかった…」
被害者…?とも言えなくないような気もする俺の立場から見てもジンはこちらの心が苦しくなるほどの痛ましげな表情である。
すまないすまないと謝るばかりで、気にしないでくれと言っても謝り続けている。
正義感が強いジンの事だから、こちらから代わりを提示しなければ彼女の罪の意識が薄れる可能性は低いだろう。
思いついた対価に、それならと声を上げる。ジンが謝るのを止めた。
「……自分、ここに来たばっかりで、住むところがないんです。…お金、もないし。だから、俺が住むところを用意してはいただけませんか?」
「…それくらいは、容易いが…」
「なら、おねがいします。これでこの話はおしまいです!…もう謝らないでください」
まだ不安そうな顔をしているジンに、笑い顔を向ける。
笑顔を作るのは苦手だったので笑えているか心配だったのだが、杞憂だったようで敬語もすらすらと出てきた。
もはや泣き出しそうだったジンは急にきりっとした顔になる。
「…わかった。それならば少し待ってほしい、すぐに用意しよう。ガイアも手伝ってくれ。……名前を聞いてもいいだろうか」
「俺ですか。俺はAです」
本当にすまなかった、と言い残し、ジンはガイア先輩を引き連れて去っていく。
すっかり代理団長の顔だ。
扉が閉まる瞬間に、ガイア先輩がこちらに顔をを向けることもなく手だけをひらりと振る。
あー、やっぱり好きだなあ。
改めて思ったところで、バーバラが話しかけてくる。
「ここに来たばっかりってことは、ここの事あんまり知らないよね?それなら、私が案内してあげる!」
「まあ、知らない…すね」
「やっぱりそうだよね、私についてきて!」
俺の手を引っ張るバーバラに少し強引だなと思わなくもなかったが、善意で行動している彼女の手を振り払う理由などなかった。
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匿名 - とても面白いです!更新頑張ってください!応援しています! (2022年6月12日 20時) (レス) @page18 id: e82571c646 (このIDを非表示/違反報告)
とも - 更新楽しみにしてます! (2021年2月14日 5時) (レス) id: b98c820ff7 (このIDを非表示/違反報告)
mizuame(プロフ) - musubeさん» おお…!嬉しいお言葉ありがとうございます!励みになります! (2021年1月3日 1時) (レス) id: 7109d6a483 (このIDを非表示/違反報告)
musube(プロフ) - ガイア先輩大好きなので嬉しい小説ですね…。めちゃめちゃ面白いですしすごい好みです。これからも制作応援してます! (2020年12月25日 20時) (レス) id: 7dc4077422 (このIDを非表示/違反報告)
mizuame(プロフ) - MAREさん» ありがとうございます〜!これからも頑張ります!朝早く起きれたときとかに更新してるのでめっちゃ不定期になると思います… (2020年12月13日 22時) (レス) id: 7109d6a483 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mizuame | 作成日時:2020年12月11日 5時