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多くは語らないくせに ページ14

不思議と手になじむ、心地よい重みだ。
ワーグナーに鞘を手渡される。なぜ渡されたのかと一瞬疑問に思ったが、確かに剣をそのまま持ち歩くわけにはいかない。
ゲームの方ではそんなのなかったし、何もない所から剣だしてたじゃんとか言っては駄目なのだ。
アイアム一般人。とりあえず剣は腰に差しとこう。どうやってとかも言ってはいけない。
感謝を述べて大きく手を振る。
ワーグナーのおう、という声を聞きながら城門を出た。
実は今日は、剣以外にもう一つ目的があるのだ。
モンド城周辺にたくさん生えてるあれ。そう、蒲公英である。
自分の知っている蒲公英とは異なる見た目なのでやはり気になる。
外に出ると、すぐに蒲公英を見つけることが出来た。
うっすら緑色に光っている。好奇心に駆られて触れてみると、なんとも不思議な感覚だった。
奇妙な表現にはなるが、風を撫でるような。触れているのに触れられていないような。
いつまでも触っていられそうだ。

「…何をしてるんだ?」

「…ふぁっ」

勢いよく振り返ると、まさに『こいつ何してんだ??』みたいな顔をしているガイアがこちらを見下ろしている。
顔というか目だ。顔は笑っているのに目から不信感が見て取れる。
推しからこの表情を向けられるのはさすがに傷つくぞ。

「あー…いやあちょっと蒲公英を」

「蒲公英?」

「いや〜これ楽しいね?すげえ変…やない、不思議な感じ」

ガイアは言うことが無くなったようでにこにことしながら固まっている。
数秒間その状態で時間が過ぎた後やがて天を仰ぎ、こちらに向き直した。

「まあ、蒲公英はモンドの特産品だからなあ。異邦人には珍しいんだろう…」

俺もそうだった、と最後にか弱く呟く。
ギリギリ聞き取れたけれど、そうだった、とは?
どうにも不安そうな、心ここにあらずといった目を一瞬したので聞くことも出来なかった。
どういうことなんだろうか?日々クエストやら討伐やらでガイアの好感度レベルを上げるのに必死になっていたので、実はキャラクターストーリーをすべて把握しているわけではないのだ。
しかしそれも一瞬。
ふっとまた表情を笑顔に切り替える。
何も聞くな、という圧を感じる笑顔だ。
じゃあな、と俺に背を向けて、ゆっくりと歩いていく。
きっと過去に何かあったのだろうというのは俺でもわかる。
しかし、そこで話しかけるのは、許されなかった。
背を向ける直前にちらりと見えた横顔が、どうか今は独りにしてくれと語っている気がしたから。

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匿名 - とても面白いです!更新頑張ってください!応援しています! (2022年6月12日 20時) (レス) @page18 id: e82571c646 (このIDを非表示/違反報告)
とも - 更新楽しみにしてます! (2021年2月14日 5時) (レス) id: b98c820ff7 (このIDを非表示/違反報告)
mizuame(プロフ) - musubeさん» おお…!嬉しいお言葉ありがとうございます!励みになります! (2021年1月3日 1時) (レス) id: 7109d6a483 (このIDを非表示/違反報告)
musube(プロフ) - ガイア先輩大好きなので嬉しい小説ですね…。めちゃめちゃ面白いですしすごい好みです。これからも制作応援してます! (2020年12月25日 20時) (レス) id: 7dc4077422 (このIDを非表示/違反報告)
mizuame(プロフ) - MAREさん» ありがとうございます〜!これからも頑張ります!朝早く起きれたときとかに更新してるのでめっちゃ不定期になると思います… (2020年12月13日 22時) (レス) id: 7109d6a483 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:mizuame | 作成日時:2020年12月11日 5時

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