壱 ページ3
飛び越えて行った人影の後ろ姿は羽織のせいか、まるで炎が走っていったように見えて。
『…炎ォ……???火だるまが走ってったんな…?』
親父を担いだままぼんやりとそんなことを呟いていると親父が降ろせと喚き始めた。
やかましいことこの上ない。
れ「降ろせ、もう俺は大丈夫だ!」
『うっせえ!!!怪我人は黙って担がれてろ!!』
れ「鬼殺隊がいるからもう大丈夫だという意味だバカタレ!!」
鬼殺隊がいるから。
そう言われて初めて周りを見渡した。
遠くでは爆裂音みたいな音が聞こえてきて、鬼は死んだなとなんとなく悟ったよ。うん。
周りには顔を隠している人、怪我をしている隊服を身に着けた人が数名いた。
確か、親父に聞いたことあるのは隠という名の鬼と隊士が戦った痕跡を片付けたり、怪我した隊士の軽い治療を行ってくれるいわばお世話係みたいな人がいる、ということ。
恐らく顔を隠している人が隠と呼ばれる人だ。
隠「その、担がれている男性はお父様で?」
『?あ、あぁ、はい。鬼と遭遇したとき、足を怪我したみたいで。この先かなり行ったところに家があるのですが、遠征していた帰りに襲われました。』
隠「なるほど、それでしたらおろして頂いて宜しいですか?」
素直に言葉に従い、親父をおろすと親父は隠の人に何かを話し、隠の人はめっちゃ頭下げてた。
何言ったんだろ、と見つめていると後ろに人の気配を感じ、振り向く。
振り向き様にいつもの癖で蹴ろうとしてしまい、足を振り上げてしまったのだがそれを容易く掴まれ、下ろされた。
『ッ!あ、すみません』
?「いや、大丈夫だ!!俺こそ急に後ろに立ってすまなかったな!」
はっはっは、と笑い飛ばす男の人を何だか…失礼だが能天気そうな人だなとか思った。
すると、親父は目を大きくさせ治療してもらった足を軽く引きずりながら男の人に近寄り話しかける。
れ「おお!煉獄さんとこの息子さんか!大きくなったなぁ!!」
ン?知り合い???
自分の記憶力はお世辞にもいいとは言えず、幼少期の記憶はほぼ抜け落ちている。
ただ鍛錬しまくったことだけは覚えてる。
痛かったし。
『…知り合い?』
れ「ああ、この子は鬼殺隊炎柱であった煉獄槇寿郎さんの息子さんの、煉獄杏寿郎くんだよ。立派になったねえ!」
にこやかに話す親父に対して一瞬誰だこいつみたいな顔をしたあと、思い出したと言わんばかりに明るい顔になった。
煉「よもや!!母の似顔絵をくれた人か!」
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作者名:煽 | 作成日時:2021年1月20日 0時