◎ 消えない灯火 ［桃］ ページ1
緑 side
「兄ちゃん、ご飯できたよ。向こう行こうか。」
ベッドに力無く体を預けていた兄が穏やかな顔でこちらに視線を向ける。
リクライニングを深くして、車椅子の移乗の体制へと入る。
兄の脇の下に腕を入れて、背中のところでしっかりと固定。
俺に身を委ねてくれる兄を落とすわけにはいかない。何度回数を重ねたって、兄が軽くなったって命の重さは変わらない。
「いち、に、さんっ」
しっかりと座位をとれたことを確認してから身体を離す。それから頭や腕、足の位置を整える。
「変なとこない？」
『ぅん、あぃがとぉ…』
兄の身体全体を包み込むように支える車椅子はつい最近この家に来た。
もうリビングまでの短い距離の往復もままならなくなったからだ。
親指と人差し指の間でゆるく握られたレバーを倒して、兄は自ら移動を始めた。
『……んま、そう…らね…(うまそうだね)』
今日は兄がALSになってから3度目の誕生日。
毎年この日を迎えることを、嬉しく思う反面でどこか胸がざわつくような気持ちにもなる。
去年までは俺に支えられながらも、フローリングを踏み締めてここまで来た兄の姿を思い出す。
祝うべき日に感情的になる俺の隣。
兄は机に広げられた料理を目にして、子供のような笑みを浮かべている。
どれから食べようか吟味しているその横顔だけは何年経っても変わらずにいる。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 711人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ばにら(プロフ) - 朔さん» 朔さん、ご愛読ありがとうございます。そして、毎日お勉強お疲れ様です(^^) 朔さんの心の拠り所を作ることのできるようにこれからも頑張ります…！嬉しいメッセージありがとうございました✨ (2021年12月4日 16時) (
レス) id: 3fbbdbace9 (このIDを非表示/違反報告)
朔(プロフ) - 受験生なので勉強の休憩に読まさせて頂いてますが本当に全部素敵で、とても綺麗です。これからも無理のない程度に投稿頑張ってください* (2021年12月4日 11時) (レス) @page4 id: 11e35a6fc0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ばにら | 作成日時：2021年12月3日 0時
