微睡み 2 (ページ40)

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緑 side

「……本当に、確かに北斗の意思で動いたように見えたんです。」

「ねぇお兄ちゃん、もう一回昨日みたいに手を握ってよ。」

あの日から、どうしてもそのお兄ちゃんの行動が頭に残っていて。すぐにお医者さんを呼んだ。けれどもお兄ちゃんが反応を示したのはあれっきり。

〈残念だけど……反射かな。北斗くんの回復は…うん、難しいものになると思うから、〉

それならばと、久しぶりに両親にも連絡を取って家まで出向いてもらった。

父さんや母さんが呼びかけても、ぴくりとも動かない北斗を見て、2人は俺に悲しい目線を向けた。

〈慎太郎…少し疲れているんじゃない？〉

何故か俺が心配されて、ヘルパーさんを呼ぶ日を増やすように言われた。

違う、そんなのを求めていたんじゃないんだよ。

根拠はないけど、あの時確かに俺を瞳で捉えたお兄ちゃんは〝しんたろう〟って呼んでたんだよ。

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誰にも分かってもらえないもどかしさを抱えて、2週間。気を落としていた俺を見透かした様に家を訪ねてきたのは、お兄ちゃんの幼なじみで俺のこともよく可愛がってくれた樹くん。

たまにふらーっと立ち寄っては、お兄ちゃんと沢山コミュニケーションをとってくれる。

青「お、北斗おひさー！元気してたぁ？」

「慎太郎、はい！これお土産、北斗と食ってよ。」

「いやー、困っちゃうよなぁ最近暑かったり寒かったり。北斗の体調は変わりねぇ？ちょっと痩せた？」

次から次へと言葉が生まれて、部屋にぽろぽろ転がっていく。こんなに部屋が暖かく感じるのはいつぶりだろう。

「んー、なんか……いいや、やっぱり何でもない。」

青「どうしたんだよ、隠すなって。」

また否定されたらいよいよ自分が惨めになるなぁなんて思って飲み込んだコトバ。

でも樹くんは真っ直ぐに俺を見つめて椅子に深く座り直す。

「なんか、お兄ちゃんが……この前俺の呼びかけに応えてくれたっていうか…まぁお医者さんには反射だって言われたんだけどさ。」

「…ごめん、やっぱり思い違いかも。」

青「……慎太郎がそう思ったなら、そうなんじゃねーの？

北斗と一緒にいる時間が長いのは、医者じゃないじゃん。…誰よりも分かってんのは慎太郎だろ。」

樹くんはさも、当たり前かの様な口ぶりで俺の欲しかった言葉をくれた。

信じてもいいんだっていう安堵と誰にも分かってもらえなかった苦しみが混ざり合い、涙と化す。

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