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緑 side
お兄ちゃんは突然の心臓発作で倒れて、低酸素状態が続いたために脳に深刻なダメージを受け、遷延性意識障害と診断された。
それが、お兄ちゃんが25歳で俺が21歳の時だった。
今から2年前のことだ。この2年、短いようでとっても長かった。
両親は事故後のお兄ちゃんを見ることにも診ることにも抵抗を示した。
元気だった時の北斗を思い出してしまうから、ってベッドに眠るお兄ちゃんをまるで別の人を見るような眼差しで見つめて。
俺にとっては、事故前も事故後も変わらず大好きなお兄ちゃんのままだったから余計悔しかった。
それからお兄ちゃんの面倒は主に俺とヘルパーさんで一緒に。
「お兄ちゃん、腕マッサージするね。」
腕も足も以前より細くなってしまった。食べる量も筋肉も減ったから。
俺より大きかったはずの体はあっという間に、ちっちゃくなってしまった。
細い腕を痛くないようにゆーっくり揉みほぐす。固まっているところはないかな、ほぐし忘れはないかなって確認しながら。
手を取ると、俺の手と重なり合った時にきゅっと握られる。
ただの反射だって分かっていても、いつも嬉しくなる。昔は、よくこの手に引かれて走ったものだ。
「お兄ちゃん、おつかれ。お昼の時にまた来るからね。それまですこし休んでて。」
そっと、お兄ちゃんの頬を撫でる。
するとその瞬間にお兄ちゃんの瞼がぎゅっと閉じられた。事故後初めて見たその違和感ある瞬きに俺は驚く。
「お兄ちゃん…？」
今度は、首が大きく揺れる。
「……おわっ、！」
咄嗟に支えると、お兄ちゃんの黒い瞳に吸い込まれるように見つめられた。
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……昔、俺のことを上から優しく見つめてくれたときの瞳の色によく似ていた。
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作者名：ばにら | 作成日時：2021年11月4日 21時
