微睡み 2 (ページ33)

今日:78 hit、昨日:60 hit、合計:239,357 hit

・ページ33

青 side

甘かったんだ。己の覚悟が。

〝ほくとを守る〟って一丁前に口にしていた俺がどれだけ浅はかだったか今なら分かる。

もし時間を戻せるのなら、浮き足立っていたあの日に還るだろう。

そうして過去の俺に迷わず、「決して家を出るな」と警告する。

・

・

・

辛と幸の文字は一画隔てて対の意味を成している。

そう、たった１つだけで世界はがらりと変わるのだ。

その1日が俺たち双子の行く末を決めた。

「ほくとぉ、頼むよ。どれもこれもイヤイヤじゃまた痩せちゃうんだからね？」

北斗は酷い偏食で、とにかく見た目や味にこだわりがあった。少しでも違えば突き返される。

だから専ら利用するのは、味が同じインスタントの食品ばかり。それらで栄養を補っていくのは至難の業だった。

「……じゅり、」

これは要らないの「じゅり」。

『はぁ、分かったって。』

お気に入りだったはずのナポリタンをフォークでぐじゃぐじゃにした北斗。

いつもは見守ることも多いけど、流石に食べる気配がないからお皿を下げた。

『ほくと、風呂ー』

その後も、無気力にソファに転がって時間だけが経過するばかり。

そんなに天井のシミを見つめるのが楽しいのだろうか、それとも他に北斗には楽しい何かが見えているのだろうか。

一点を見つめてぼんやりする北斗。せっかく沸かしたお風呂も冷めてしまって、仕方なく追い焚きボタンを押す。

いつもなら興味津々な音声ガイドにもピクリとも反応しなかった。

・