微睡み 2 (ページ18)

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黒 side

勉強をするために早起きをすると、リビングにはもう兄貴の姿。

あんな喧嘩をしたのに、俺の弁当を作っているみたいだった。

部屋の前に来たはいいけど、なんとなく気まずくて。そっと踵を返しかけたその時だった。

ドアの向こう側で皿が割れた音がして、軋むアパートのフローリングを大きく揺らした。

まだ日も昇らない朝に似つかわないほどの衝撃だ。

考える間もなく扉を開けると、そこには散らばった皿の破片と崩れ落ちた兄の姿。

「…兄貴、」

『ごめん、北斗。起こしちゃったか…？困るよなぁ、ドジしちゃって。』

俺を見てすぐにカケラを拾い始めた兄だったが、声が震えている。いつもの様子と違っていた。

「ううん、その前から起きてた。怪我…は？」

『んー？ないない。平気。あ、ダメだよ北斗近くに寄らないで。危ないから。』

「……俺も拾う。」

そっと破片に手を伸ばすと、すかさず兄の手が飛んできて俺の手首を捕らえた。

兄の手から伝わってきた熱がじんわりと染み込む。

「あっつ、兄貴熱あるって。」

『なーにいってんの！気のせい気のせい。』

結局俺には1つも拾わせないまま、新聞紙に割れた皿をくるんでまたキッチンに立ち始めた兄。

足取りはどう見たってふらついていて、頬も紅潮しているのに。

それでも尚、平然を装おうとする彼の意を汲めなかった。

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