ブランコ ページ26
光(35)大貴(15)慧(8)家族設定
光side
「いやぁぁ……！！ぎゃあぁぁ…」
光「どうしたどうした？なにが嫌だった？」
朝から小さな部屋に響く叫び声にもいつしか何も感じなくなっていた。
大貴「……うるさいなぁ、朝くらい静かにしなよ。ごちそうさま。」
年の離れた兄弟の大貴と慧。
昔はよく2人で遊んでいたけど、大貴が思春期真っ只中で最近は冷たい発言も増えている。
それには慧が障害を持っているという事も理由に含まれるのかもしれない。
慧は知能に障害があって本当なら小学校に通っている年だけど、感情のコントロールがままならないため、どこにも受け入れてもらえず俺が自宅で仕事をしながら面倒を見ている。
気に入らない事があっても言葉にするのは難しく、こうやって癇癪を起こすのも珍しく無い。
慧「………っ…や！！やぁぁ！！」
光「ご飯？サラダが嫌なの？」
慧「……ぁぁぁあ！！」
光「……ん〜、わかんねぇ、」
俺になにを求めて泣き叫んでいるのかも分からない。
こればっかりは慣れない。
大貴「……トマト。」
光「…え？」
身支度を整えてカバンを背負った大貴が二階から降りてきて、そうポツリと口にした。
大貴「………だから、サラダにトマトが入ってないから騒いでるんだよ。」
光「そうなの？慧ちゃん？」
俺は急いで慧のもとに洗ったプチトマトを持っていくと、ぴたりと泣き止んだ。
光「そっかぁ、慧ちゃんトマト好きだもんね。」
辺りを汚しながらばくばく口に食べ物を詰め込み始めた慧。
こうなればあとは放っておけば勝手に食べる。
一件落着して、大貴にお礼を言おうと顔を上げるともうそこに大貴は居なかった。
でも実は慧のことを見てくれているんだなぁと嬉しくなったのだった。
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作者名：あむ
| 作成日時：2020年5月1日 16時
