しゅいろ ページ5
光side
今日はハロウィン間近の金曜日。
放デイでは皆に少しでも季節の移りゆきを感じて欲しいから、ハロウィンパーティーを企画した。
職員さんは全員好きなコスチュームで仮装して、お出迎えに向かう。
俺もドラキュラに扮して、準備は万端！
早速子どもたちがバスから降りてくると、いつもと違う先生たちを見て驚いたり、喜んだり。
光「慧くーん！今日もおつかれさま。」
そして安定のマイペース慧くん。今日も1番最後にバスから降りてきた。
いつもの流れでハイタッチできるかなって待ち構えていたのに、そのまま慧くんは俺の横をスルーして歩いていってしまった。
光「あれっ、慧くん！」
慧「ん゛ーっ」
洋服の襟元をがじがじ噛みながら、不安そうに周りを見渡している。
光「おーい、慧くん。」
僕が視界に入ると、すぐにふいっと逸らされてまた逃げるように別の場所へ。
…もしかして、俺ってこと分かってない？
光「慧くん、光だよ。今日はドラキュラだけど…！ね？」
慧「ぁあ゛ぁあ〜っ、……！！！」
「うぅーっ！ぇぇえん！」
俺がいつもするように慧くんの肩を優しく撫でると、走って逃げて泣き始めてしまった慧くん。
光「わ！ちょっと！大丈夫！ほら、俺だよ！光だよ！こ、これでわかる！？慧くん！」
まさかまさか、泣いちゃうなんて思ってなかったし、やっと最近距離を詰めることができたのに嫌われちゃったらどうしよう！
俺は急いでハットを投げ捨て、マントを脱ぎ捨て。
光「ごめん！慧くん！」
慧「…ふぇえっ」
慧くんの泣き声に誘われるように外に出てきた職員さんが俺の痴態を見て口を覆い隠しているのが見える…。
俺も他の人みたいにかわいい着ぐるみ系にしておけば良かった、なんてもう遅い。
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作者名：あむ
| 作成日時：2021年10月29日 16時
