いのち (ページ6)

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慧side

それからの毎日。

いくら寝ても、いくら食べても、いくら休息を取っても自分の些細なミスが減ることはなかった。

どうしてだろう。自分はこんなに一生懸命なのに。俺はちゃんとやってるはずだ。

宏太「伊野尾、一昨日取引先から送って欲しいって頼んだ資料がまだ来てないって連絡があったんだけど、」

慧「……っ、あれ確認したはずだったのに。ごめん電話代わる、」

まただ。また失敗した。

あれだけ付箋に書いてデスク周りに貼っておいたのに。どうしてこんなに上手く行かない？

お相手の会社が優しい方だったから、俺の失敗も笑い飛ばしてもらえた。

でもこれがもしもっと大きな仕事につながる資料だったら。

全ての責任は、ここを纏めてる薮にのしかかる。昔からの友達とはいえ、仕事では迷惑はかけられない。

宏太「…なぁ、伊野尾。最近さ、疲れてるんじゃない？有給も残ってるし次の週末にかけて少しゆっくりしたらどうだ？」

慧「…ごめん。ミスが増えてるのは分かってる。……ちゃんとやるから、」

宏太「違うよ、責めてるんじゃなくて。」

ミスが度重なる俺を見て、薮がこう言いたくなるのも分かる。

自分でも痛いほど、無能さが分かるから。

でも今足を止めたら本当に1人になってしまう気がした。

このオフィスから切り離されて、取り残される気がしてそう思うとまたどくんどくんと心臓が波打った。

慧「本当ごめん、明日からは切り替える。お疲れ様。」

宏太「…待てって！伊野尾！」

こんな日は、家に帰って早く寝てしまおう。

そしたらきっと明日にはこんな気持ちも忘れられるかもしれない。

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