いのち (ページ13)

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大貴side

大貴「……隠れんなら、もっと上手くやれバカ親父っ、」

あんな手紙を残したくせに、父親は俺に見つけて欲しかったとでもいうかのように思い出の公園にいた。

小さい頃、何度も何度も通った公園。

逆上がりができたら、俺より泣いて喜ぶから俺が逆に喜べないし、

滑り台が滑れただけで、馬鹿みたいに褒めちぎるから恥ずかしくなったり、

男親だからって、近所のママさんに少し距離を取らレたことあったけど、気にせずここに連れてきてくれた。

　
そんな思い出の場所。

逆光で父の顔はよく見えなかったけれど、俯いたその姿から苦しみを感じてそっと歩み寄った。

慧「……こないで、大貴。」

　

大貴「父さんっ、」

慧「…わかってくれ！…大貴の人生、棒に振りたくないんだよ。」

大貴「…なんだよそれ、わかんねぇよ。」

慧「……病気になった。認知症だって言われた。俺は全部忘れる、大貴のことも思い出もっ、！！」

父さんが俺に向かって声を張り上げたことなんて、殆どなくて。

頭を抱えて泣く父を前に、何も言い返せなかった。

慧「見たんだろ、それ。…母子手帳。」

大貴「……、」

慧「その写真の人、俺の親友なんだ。大貴の本当のお父さんだよ。」

父はさっきの様子と打って変わって、憂いを帯びた顔をした。

狂うように鳴いていた蝉は、いつしか息絶えたようだ。

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