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侑李side
侑李「……っ、にーちゃん、」
スタンバイ列から、裕翔先生の腕を引きながらゴール地点まで歩いてきたにーちゃん。
泣いている大貴くんを前にして、少し左右に行ったり来たりを繰り返した後。
隣にしゃがんで、大貴くんの頭にそっと手を置いた。
慧「……んー、…んーー、」
頭を撫でてから、また少し立って歩いて、また大貴くんの側に。
どうしたらいいのかわからない気持ちと、お友達を励ましてあげたい気持ちで揺れているのかもしれない。
でもしばらくそうしていたら、不思議と大貴くんの泣き声が止んでいることに気がつく。
すると、裕翔先生がこちらに向かって手で大きく丸を作ってくれた。もう大丈夫みたいだ。
侑李「…にーちゃん。すごいなぁ、」
知らないところで、僕の知らない兄の姿が形作られていた。嬉しくて、ちょっぴり寂しいような気もして。
きっと僕や宏太くんじゃ入れない2人の世界が確実に存在していた。
隣を見ると、宏太くんも僕と同じことを思っている顔をしていた。
にーちゃんの世界に入れるチケットを持っている大貴くんのこと、ちょっとだけ羨ましいかも、なんてね。
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そしてようやく高等部のかけっこの時間。
年齢順に組まれる為、にーちゃんは1番最後だ。
ピストルが嫌なのか、ずっと耳を塞いでいるのは気になるところ。
先生が聴覚過敏が酷い子にはイヤーマフをさせてくれているみたいだけど、にーちゃんは気分じゃないのか拒否してる。
いよいよ最後のレース。相変わらずふにゃふにゃしてて、スタートラインで先生に支えられているけど大丈夫だろうか。
よーい、ドン!
そんなアナウンスで、一気に走り出した子達。
先を行く4人とはかけ離れて、にーちゃんはやはりコースを無視しながら1人でのんびり歩いている。
ここまでは、想定内。転がらなかっただけ偉いと思う。
「けいくーん、頑張れー!」
「けいくんいいよいいよ!かっこいい!」
優しい先生達に励まされながら愛想を振りまいて歩いている。今までにはなかったタイプ笑
とっくに他の皆がゴールしている中でにーちゃんはまだまだ加速するつもりは無いみたい。
侑李「にーちゃん!頑張れー!」
大幅にコースアウトすると先生が戻してくれる、を繰り返して座ることなく折り返し地点まできたにーちゃん。
これだけでも凄い進歩だ。
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作者名:あむ | 作成日時:2021年9月1日 13時