きんいろ ページ38
侑李side
〈もう、なんなのよ！全く酷いと思わない？私何度も言っといたのに！〉
侑李「まぁまぁ…安心してよ。ビデオはしっかり撮ってくるって。」
〈よりによってなんで今日なの…1番最後だよ！？〉
どうして朝からこんなに母さんがおかんむりなのかと申しますと…
今日はにーちゃんの最後の運動会。
母さんも張り切っていたにも関わらず、急なトラブルで仕事に向かわなきゃいけなくなったらしい。
にーちゃんの水筒を用意しながら、永遠怒っている。
授業参観に、学芸会などそういったイベント事には必ず足を運んでくれる母さんだから最後の運動会を見られないのは相当悔しいのだろう。
だから僕は、にーちゃんと同じクラスの大貴くんのお兄さんで僕の中学の先輩にあたる宏太くんと見に行く約束をした。
長年ひとりの世界で生きてきたにーちゃんに出来たはじめてのお友達。
かなり大貴くんがにーちゃんに懐いてくれているようで、もう先月から何度も連絡ノートでその名前を目にした。
〈慧、頑張ってね。慧ならできる！怪我しないようにね。〉
凄い熱量でにーちゃんに語りかける母さんだけど、当の本人は我関せず、という表情でお食事中。
食パンの耳だけご丁寧に残して、白いところだけ指で摘んで食べている。
侑李「にーちゃん、美味しい？食べなきゃ運動会頑張れないもんね。おかわりもあるよ。」
慧「……ぬぅ〜…ぁ……ぅー」
とりあえず、パンがお気に召したようで顔の横で指をひらひら。ご機嫌さん。
この調子で運動会も元気に頑張ってほしいな。
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作者名：あむ
| 作成日時：2021年9月1日 13時
