ひすいいろ ページ26
侑李side
慧「ぁぁあ〜っ……」
侑李「にーちゃん、立ってよ〜、あとちょっとだから。」
慧「……んぅ〜、ぁ〜、」
侑李「裕翔先生に怒られちゃうかもよ？」
今日は、朝から駄々っ子なにーちゃん。
具合が悪い様子はないって母さんが言っていたから大丈夫だと思うんだけど、朝からとにかくやる気がない。
ご飯も、お着替えも、靴を履くのも。
何をするにもぐでーんと横になって、「やって」のポーズ。
しっかり、特別支援学校のバスにも乗り遅れ、バスでならたった10分の道のりを歩いて学校に向かっている最中なんだ。
極め付けには、歩き疲れたのか道端に座って僕を見上げる。
こうなったら、エンジンがかかるのを待つしか無い。僕は、自分の中学校にも遅刻しますと連絡を入れてにーちゃんの隣に座った。
侑李「にーちゃんも、ワルだねぇ。」
慧「…へへっ……ひっ、……」
侑李「意味わかってないでしょー、」
おでこにぺし、と軽くチョップをお見舞い。
慧「ぁ〜っ、……ふふっ！」
当の本人は、遊んでもらったつもりらしく、僕の手を掴んで楽しそうに笑っている。
侑李「ま、いっか。」
疲れた時にはひと休み。これが我が家のルールだから。
・
・
侑李「おはようございます。ごめんなさい、遅くなって、」
裕翔「いいえ。大丈夫ですよ。慧くん、よくきてくれたね！おはようございます。」
特支の校舎の前で待っていてくれたのは、にーちゃんの担任の裕翔先生。
遅れる、と連絡を入れた時も凄く心配をしてくれてゆっくりで大丈夫、と優しい声で包み込んでくれた。
そんな裕翔先生のことがにーちゃんも大好き。
校門の前に立つ裕翔先生を見つけた時、ちょっと歩くスピードが早くなったのを僕も見逃さなかった。
裕翔「侑李くん、学校大丈夫？」
侑李「まぁ、連絡入れたしゆっくり行きます！じゃ、よろしくお願いします！」
裕翔「はーい！いってらっしゃい！」
僕はにーちゃんが奏でる鈴の音が小さくなるまで、なんだか寂しくて校門の裏でその音を聞いていた。
にーちゃんが今日も1日、楽しく元気に過ごせるといいな。
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作者名：あむ
| 作成日時：2021年9月1日 13時
