ねずみいろ ページ14
侑李side
侑李「…あれ、にーちゃんいない…」
起床と共に感じる違和感。
いつも隣で眠っているはずのにーちゃんは僕が気付かぬうちに起きてしまった様だ。
ベッドを触ってもぬくもりを感じないあたり、にーちゃんはだいぶ早い時間にベッドから抜け出したのだろう。
とは言っても時刻は朝の7時。
にーちゃんは昔から睡眠障害が酷くて、寝付きが悪い日があったり、深夜にぱっちり目が覚めたり。
なかなか体内時計のサイクルの調節が上手くいかないのか、長時間安定した眠りができないにーちゃんは少ししんどそう。
侑李「にーちゃん、おーはよ。」
息子2人を女手一つで育てる母は、掛け持ちの仕事に朝早くから出た様だ。
リビングは静かで、電気も付いていない。
朝日が少しずつ窓から入り始めた部屋で、にーちゃんはソファに体育座りをしながら前後に揺れていた。
侑李「にーちゃん?いつから起きてたの?起きたらいないから寂しかったじゃん。」
もちろん返答はない。それでも僕はにーちゃんの隣に座ってその様子をじっと眺める。
侑李「外出る?気持ちーよ多分。」
にーちゃん脱走事件以来、庭へ出る鍵が頑丈になった我が家。
僕か母さんでないとその解錠は出来ない。
ガラス戸を開けると、朝の気持ちいい風が部屋にふわりと流れ込んできた。
侑李「にーちゃん開けたよ。」
いつもなら喜んで外に出るのに、今日は外をちらりと見るだけで行動に移そうとしない。
自らでダメージ加工したセーターに指を突っ込んでぐるぐるしてる。
なんとなく、今日は調子が悪いのかもしれない。
にーちゃんの額に手のひらを滑り込ませるけど、特に熱さは感じない。
気分に体調が左右されやすいにーちゃんだから、こんな事も珍しく無いけど少し心配だなぁ。
侑李「ご飯先食べる?」
もしかしたらお腹が空いているのかもしれない、と思った僕はお皿に食パンを1枚乗せてにーちゃんに持っていく。
慧「…….んぅ〜…んんん、」
でもにーちゃんにはお皿をぐいっと押し返された。いらない、の合図。
にーちゃん歴が長い僕でも、今日は解読の調子が悪いみたいだ。
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作者名:あむ | 作成日時:2021年9月1日 13時