・ ページ48
慧side
しかし、彼の遺品はそれだけにとどまらなかった。
その遺品に気がついたのは、涼介が亡くなって2ヶ月後のことだった。
会社で受けた健康診断で引っかかった俺は2ヶ月ぶりに病院を訪れていた。
〈伊野尾さん、ここに小さな影があります。とても見えにくい位置にあるのですがおそらくは腫瘍かと。〉
慧「……え、腫瘍って……」
〈安心してください。早期の発見でまだ小さかったので、治療で治る可能性が非常に高いです。〉
その時は、殆ど頭が働かないまま説明を聞いていたのた俺。
しかし、冷静になってレントゲンをよく見るとその腫瘍は肺のあたりにあることに気がついた。
慧「………まさか、これって…、」
お医者さんがおっしゃった「見えにくい」腫瘍であったこと、「もう少し発見が遅れていたら治らなかった」こと。
それと結びつくのはたった一つの事実。
慧「……あいつ、っ、……ばかやろうっ、……なんで、…おれなんか、」
涼介が、抱きしめて欲しいと強請ったあの日。
涼介は、俺の体のうちに潜むこの腫瘍に気がついていたのかもしれない。
こんなに大きな病、治せば自分にどれだけの代償が巡ってくるかも分かっていた筈なのに。あいつは……、俺の胸に擦り寄った。
最期の力を振り絞って、俺の肺から殆どの腫瘍を取り除いた。
その代償が、呼吸困難だったのだろう。
心底敵わないと思う。
俺の胸に飛び込んだ時、涼介は何を思っていたのだろう。
俺が呑気に、あいつの温もりを感じている間、どれだけ大きな不安と、恐怖と、戦っていたのだろうか。
俺がもし、涼介と同じ�猯廊瓩鮖�っていたとしてそんなことができるだろうか？
自ら、火の中に飛び込めるだろうか？
答えはNOだ。
涼介を選んで、天がこの�猯廊瓩鮗�けた意味が今ようやくわかったのだ。
あの�猯廊瓩�。あの�猯廊瓩梁減澆海修�、涼介を涼介たらしめていたのである。
慧「……ありがとうな、涼介。本当にありがとう。」
涼介はこの世界にはもういない。
しかし、涼介が遺した笑顔が、未来が、希望が、この世界には散らばっている。
涼介が咲かせた花を枯らさぬように、そっと大切に育てることが、この世に遺された、いや遺してもらった俺の定め。
今日も涼介が蒔いた種は、芽を出し、花を咲かせ、また種子を飛ばす。
犠牲ではない。
_____ここからまた、始まるのだ。
・
「千の生か、一の死か。」/ end
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 681人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
のん - 凪さん» お返事お待ちしております・・・(汗) (2021年5月23日 18時) (
レス) id: cf51685787 (このIDを非表示/違反報告)
のん - 凪さん» リクエストさせて頂いたお話が、いつ頃公開されるのか､教えて頂けると嬉しいです。 (2021年4月19日 20時) (レス) id: cf51685787 (このIDを非表示/違反報告)
のん - 凪さん» そして、出来たら･･･少年が受けてきてた行為の様を障りだけでも構いませんので、描いて頂けると嬉しいです･･･！ (2021年4月14日 21時) (レス) id: cf51685787 (このIDを非表示/違反報告)
のん - こちらの方で描いて頂く事は、可能でしょうか･･･？ (2021年4月14日 21時) (レス) id: cf51685787 (このIDを非表示/違反報告)
凪(プロフ) - のんさん» 返信遅くなりまして、申し訳ありません…！恋仲無しの方向で書かせて頂きます！！ (2021年4月14日 19時) (レス) id: 1693d0e47d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あむ
| 作成日時：2021年2月21日 20時
