・ ページ19
侑李side
走って家に帰ると、ドアの鍵は開きっぱなし。
とにかく戸締りを気にする裕翔がこんなことするなんて信じられない。
侑李「裕翔！帰ってるんでしょ？」
玄関でひっくりかえったローファーに違和感を覚えつつ部屋に入ると、洗面所から光が漏れている。
激しく水の流れる音に誘われるように中に入ると険しい顔で手を洗う裕翔。
侑李「……ちょ、ちょっと裕翔！！」
僕が思わず手を掴んで制すると、全力で抵抗してくる。
裕翔「やめてっ、やめて。洗わないと、もっと綺麗にしないとっ、…」
冷水の中強い摩擦で擦られたその手は真っ赤になっている。
侑李「…綺麗だよ。もう十分っ！」
裕翔「……よくないっ、よくない。汚い。なんでこんなに汚いの、」
侑李「もうやめて、！切れちゃうよ、っ」
強く擦った関節部分は腫れ上がって今にも切れてしまいそう。
侑李「…裕翔！！」
僕が声を荒げて水を止めると、裕翔はへたりと力が抜けるようにしゃがんだ。
侑李「……ハンドクリーム塗ろっか。」
大きな図体で小さく縮こまった弟の腕を引いてリビングに向かう。
タンスにしまっておいた少しお高めのハンドクリームを出して、裕翔の手に優しく擦り込む。
冷たい手のひらに滑らかなクリームを広げると少しずつ指が熱を持ってくる。
侑李「もう。裕翔が先に帰っちゃうから寂しかったよ。」
あえて僕は何も聞かない。裕翔がそうしたくなった理由は彼だけ知っていればいい。
裕翔「……っ、はやく手を洗いたいなって思ったら、なんか体が止まんなくて、」
彼の手に擦り込まれた、ハンドクリームはすぐに部屋の中を甘い香りで満たしていく。
侑李「お兄ちゃんを置いてくなんて良い度胸だなぁ。」
裕翔「……ごめんね。明日は忘れないようにする、」
侑李「あったりまえ。…よし、完了。あんまり強く洗っちゃ痛いからね。」
裕翔「…ありがと。」
あーあ手洗い欲求に負けてしまうとは、僕もまだまだだなぁ。
でもいつかはさ。何年、何十年経ってもいいから。
僕との生活が裕翔の「こだわり」になっているといいななんて思うんだよね。
・
「うるおい」/ end
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 681人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
のん - 凪さん» お返事お待ちしております・・・(汗) (2021年5月23日 18時) (
レス) id: cf51685787 (このIDを非表示/違反報告)
のん - 凪さん» リクエストさせて頂いたお話が、いつ頃公開されるのか､教えて頂けると嬉しいです。 (2021年4月19日 20時) (レス) id: cf51685787 (このIDを非表示/違反報告)
のん - 凪さん» そして、出来たら･･･少年が受けてきてた行為の様を障りだけでも構いませんので、描いて頂けると嬉しいです･･･！ (2021年4月14日 21時) (レス) id: cf51685787 (このIDを非表示/違反報告)
のん - こちらの方で描いて頂く事は、可能でしょうか･･･？ (2021年4月14日 21時) (レス) id: cf51685787 (このIDを非表示/違反報告)
凪(プロフ) - のんさん» 返信遅くなりまして、申し訳ありません…！恋仲無しの方向で書かせて頂きます！！ (2021年4月14日 19時) (レス) id: 1693d0e47d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あむ
| 作成日時：2021年2月21日 20時
