・ ページ23
光side
彼と初めて話して俺はこう思った。
格子窓から見える景色をもっと素晴らしいものにしたい、と。
家族とも会えないあのくらい小屋で、庭を見ることを唯一の楽しみとしてくれているならば。
伊野尾家に雇われた庭師として、そのような仕事をしたいと思った。
次の日から色とりどりの草花を仕入れ、格子窓から見える部分に植えて行った。
大きな木は形をいつも以上に綺麗に整えて、細かい部分にも気を配った。
光「……できたっ、」
猛スピードで作った庭にしては上出来。
きっと彼も喜んでくれるだろう。
光「慧のために極上の庭を作りました。」
小屋の戸を叩き、声をかける。
慧「…けほっ、……そとに、っ、でてもよいか？」
光「もちろんでございます。」
この時俺はもう、処分の身になってもよいと思っていた。
彼が喜んでくれたらそれでもう庭師としての任務を全うしたと言えよう。
この間よりさらに細くなった彼の腰に手を回しゆっくりと庭へ誘導する。
慧「っ……、」
息を飲む音が聞こえ、顔を覗き込む。
慧「俺はこんなに素晴らしい庭、っ、見たことがない、」
光「慧のためだけにつくったんです。」
慧「八乙女は、最高の庭師だな、っ、」
慧の顔がぱあっと明るくなって、俺は本当に良かったと思った。
慧「……っ、げほっ、……かはっ、……っ、」
でも、次の瞬間、彼の体は傾いた。
慧「……げほっ……、っ、くっ……」
彼の口からは咳とともに、血が流れ落ちる。
手の隙間からこぼれた血は、砂利石にポタポタと落ちた。
光「だれか、だれか呼びましょう、！」
慧「まてっ、……けほっ、……」
「もう………よい、」
光「何を仰っているのですか？」
慧「もともと、…げほっ、……もう、っ、長くない、」
光「ですが……！」
慧「すまないな……、八乙女、…すてきな庭を、よごしてしまった……」
「俺は最期に、…こんな庭を見ることができて、……幸せだ。」
光「……、やめてください最期だなんて、」
慧「ありがとう。…八乙女。」
彼は俺に体をもたれたまま。
俺の作った庭の中心で息を引き取った。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 495人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ライカ - 続きです。兄二人で看病していると、熱も上がってきて、幼児退行してしまうarさんがみたいです。ラストはハッピーエンドでお願いします。 (2020年8月11日 18時) (
レス) id: 8fd08431c8 (このIDを非表示/違反報告)
ライカ - はじめまして！リクエスト失礼します。兄弟パロでお願いします。生まれつき下半身不随のarさんとarさんを支える兄のtkさんとymさん。自分が１人で何も出来ないと悩むarさんが、ある日、そのストレスで体調をくずしてしまいます。 (2020年8月11日 18時) (レス) id: 8fd08431c8 (このIDを非表示/違反報告)
凪(プロフ) - はなんさん» 返信が遅くなりまして申し訳ありません！素敵なコメントありがとうございました！ (2020年8月7日 20時) (レス) id: 1693d0e47d (このIDを非表示/違反報告)
こもも - リクエストお願いします！小学生の頃から同じ病室に入院しているinar。arだけ先に完治をしたが、自分だけ退院できることをなかなか切り出せないみたいな感じでお願いします。明るいラストがいいです！よろしくお願いいたします。 (2020年8月6日 10時) (レス) id: 04ec57a8eb (このIDを非表示/違反報告)
はなん(プロフ) - テスト頑張って下さい！お話、楽しみに待っています！ (2020年7月14日 23時) (レス) id: 039a9f3787 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あむ
| 作成日時：2020年7月5日 16時
