Want to live . VI

負けない ページ39

宏太(40)大貴(18)親子設定


宏太side


ベッドサイドに置いていた携帯の着信音で目が覚める。


ディスプレイにあかりを灯すと一件のメッセージ。


大貴 練習おわった！今から走って行く！


汗をだらだらと垂らして走ってくることが予想されるから、フェイスタオルを棚から取り出して手に持った。


宏太 急がなくてもいいよ。気をつけてね。


きっと大貴はもうメッセージになんて目もくれずに走っているんだろうな。


数分もすると元気な足音が聞こえてきた。


大貴「パパ！！ただいま！」


宏太「あーもー、やっぱり汗だらだらだ。おいで。拭いてあげるから。」


やっぱり予想通り大貴は汗でびしょびしよ。


髪の毛はお風呂にでも入ってきたのか？ってほど。


大貴「うん！拭いてー！」


大貴はバスケが大好きな高校3年生。


今は部活でキャプテンを任せて貰っているからか、気合い入りまくり。


大貴「あのね、パパ。最後の大会土曜日になったんだ。………これる？」


頭をわしゃわしゃと拭いてあげていると、突然に顔が上がって俺の目を捉える。


大貴「無理だったらいいんだ。体が大事なのは分かってる。」


俺は今、胃がんを患って入院している。


手術が終わり、抗がん剤を使用している最中だ。


宏太「いつも見にいってあげられなくてごめんね。先生に聞いてみる。」


大貴「………ほんと！？」


父子家庭なのに俺が倒れちゃったから大貴はいつも家で1人寂しい生活をしている。


せめてずっと続けてきたバスケの最後の試合くらい見にいってあげたい。


大貴「パパが見にきてくれるならもっと練習頑張らなきゃ！」


反抗期も無く、心が綺麗に育ってくれたものだ。


俺が育てたなんて嘘みたい。




・

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す