moon (ページ8)

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黒 side

黒「慎太郎、大我どこ行っちゃった？」

緑「しらないよ、さっきからいない。ぶぉーん、がしゃーん！」

リビングで2人アニメを見ていたのを確認して、書斎の整理に行った後目を離していたのがまずかったのか。

慎太郎は1人で戦隊モノのソフビで遊んでいて、そこに大我の姿は見当たらなかった。

いつもなら1人で部屋を動きたがらない大我。お休みの日でもリビングでずっと過ごしているからこんな事は珍しい。

黒「……大我？どうしたの。」

急いで廊下に出ると、トイレのドアの前でしゃがんでいる大我。横にズボンとオムツが脱ぎ捨てられていて、足元には水溜まりが出来ている。

俺の声に気がついて振り返った大我はまるで目で「ごめんなさい」と訴えかけているよう。

黒「ごめんね、寒かったでしょう。今タオル持ってくるからね。」

床を拭いて、大我をそのままお風呂場に連れて行く。お湯で洗ってあげながら、お話をすることにした。

黒「1人でトイレの前まで行けて偉かったよ、大我。全然気にしなくていいんだよ。」

今までの大我なら尿意を感じて行動するなんて出来なかった事。でもその行動の背景に、弟に今朝自慢された事があるんじゃないかなって。

お兄ちゃんだもんな。きっと少なからず感じ取ることはあって、焦ってしまったのだろう。

初めてでトイレに行ってもどうするか分からなくて、それでも助けは呼べないから苦しかったと思う。もっと俺が早く気付けていたらよかった。

黒「大我は大我のペースで頑張ればいいの。次は俺と一緒に行ってみようね。」

大我が不安そうに俺の服を摘んで、潤んだ瞳で見上げてくる。

黒「出来るよ、大我なら。だって俺の子だもん。」

遅いとか、早いとか関係ない。生きていてくれるだけで、お父さんは幸せだよ。

fin

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