moon (ページ12)

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黄 side

『ちゅっ、ちゅ……ちゅっちゅ、ない、っ』

結局あれから何時間探してもちゅっちゅは見つからず、支援学校や放デイにも電話をしたけど今のところ落とし物としては届いていないし、慎太郎がちゅっちゅを持っていなかったら先生方もすぐ気がつくだろうとのこと。

確かになぁ。慎太郎のちゅっちゅへの執着は異常。人見知りもなく、偏食もない(食べ物に関しては、食べ過ぎるくらい(植物、洋服など何でも口に入れる))慎太郎の唯一の強ーいこだわり。

ちゅっちゅがないとルーティンも総崩れな為ご飯も食べられない。どうしようかと頭を悩ませていたその時。

黒「ねぇ、樹が持っていったって事はない？昨日ここで荷造りしてたよね。」

黄「………あるわ、かなりの確率で。」

北斗がはっと思い出した昨日のリビングの状況。少し遠方への仕事だと言って、大きめのボストンに荷物を入れていた樹。間違えて入ってしまった可能性大いにある。

俺は急いで携帯で樹に連絡を取る。

黄「たのむ、出てくれ……！……あ、樹！？今平気？」

青「なに、どしたん。」

黄「お前のカバンにちゅっちゅ入ってないか？」

青「え？なんで？」

黄「今大捜索中なんだよ！昨日荷造りリビングでしてたろ？」

青「うわっ………マジで入ってる。これ、平気……じゃないよな？慎太郎やばいだろ。」

黄「よかった……あった！慎太郎、あったってよ！ちゅっちゅ！」

樹がすぐにビデオ通話に切り替えてくれて、慎太郎にちゅっちゅを見せる。

『……あぁ、しんちゃんの、ちゅっ…ちゅ、！』

青「慎太郎。ごめんな？今日夜8時までに持って帰る。それまで待てそう？」

『……はちじ、』

青「そう。短い針が8。長い針が12。分かった？」

かなりパニックだった慎太郎も見通しが立った事で少し落ち着いたみたい。渋々時計を見て頷いた。

俺も北斗も慎太郎も。これで皆一安心。

『ﾁｭｯ……ﾁｭｯ…』

タオルが帰ってくるまで今日だけ復活した指吸い。物理的に指を咥えて樹の…いや、ちゅっちゅの帰りを待っていた慎太郎でしたとさ。

fin

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