微睡み (ページ45)

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黄 side

本番を終えたその足で、俺たちは迷わず大我の元へ向かった。

相変わらず、あいつは眠ったままだけど。

本番直後、大我のお母さんから、〝呼吸器をたった今外してもらった〟と連絡を受け、本当にもう少しの時間しかもたないことを告げられた。

長くない時間をお母さんは分けて下さった。

青「きょも〜、来たよー！」

黒「樹声がでけーよ。」

真っ白な顔して眠る大我を5人で囲んで座る。

赤「…大我、俺たちやったよ。」

本審査からは除外されたけれど、特別賞を頂いて人数分小さなメダルを貰ってきた。

今まで3年間で積み重ねてきたものがカタチになったようで、とても嬉しかった。

緑「きょもも、おめでとうだよ。」

骨が目立つようになったその手に、慎太郎がメダルを握らせる。

しかし、意識がないきょもの手からはメダルはしゅるりと逃げていく。

慎太郎は悲しそうな顔をして、メダルを枕もとに置いてやった。

今日で俺たちは軽音部からは引退する。後輩もいないし、また学校からこの部活は姿を消す事になるだろう。

でも俺たちの青春は確かにあの部室に、作り出した音楽に、そしてこうして出会えた仲間の中に宿り続ける。

赤「さ、じゃあ打ち上げしよ！」

黒「そうだな。飲み物注ごう。」

これも俺たちなりに話し合って決めたこと。
このバンドに涙は似合わないから、笑顔で送り出してやろうと5人で決意した。

黄「じゃあ、ジェシー乾杯の合図を。」

赤「え〜、HAHA、おれぇ！？」

青「そりゃそうだろ、メインボーカルさんよ。」

暫くもじもじしていたジェシーだったけど、ふとした呼吸で病室から音が消える。

〝俺たちの素晴らしい出会いに、乾杯！〟

別れを惜しむくらいなら、グラスぶつけて送り出すさ。

俺たちにはそれくらいが似合っているから。

6人分のグラスが奏でる、軽やかな音色。

これが俺たちのもう一つのスタートの合図。

fin

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