微睡み (ページ41)

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黒 side

そのまま、慎太郎と樹は取っ組み合いの喧嘩を始めた。

桃「やめて、慎太郎！樹も！」

間に入ってくれたのは、高地と京本。

俺とジェシーは目の前に広がる光景のあまりのショックに動き出せなかった。

桃「慎太郎、樹から手を離して。話そう。大丈夫、話せばわかるから！」

思い返せば俺たちをこの道に誘ってくれたのは、京本だった。

その頃、俺たちの学校には軽音部なんて無くて。でも半ば強引に、「絶対楽しいって思わせるから！」って手を引かれて集まったのがこの6人。

性格がバラバラな俺たちが纏まるまでには、失敗したことの方が多かったけどそれでもここまでやって来た。

挫けそうな時、なんとかしようと声を張り上げるのはいつだって京本。

あいつが言い出すことはいつも突飛だったけど、ついて行く事に不安は生まれない不思議な安心感。

俺たちはたくさんあいつに救われてきた。

桃「…やめっ、…てっ、」

赤「…大我！？」

ジェシーの大きな声で意識を引き戻され、彼が駆け寄っていく方を見る。

桃「…いたいっ、…ぃ゛っ、…ぅっ、」

慎太郎と樹の間に入っていた筈の京本が、床に倒れ込んでいた。

俺が目を離しているほんの一瞬で。

黄「大我、大我！」

桃「ぁ゛ぁあ゛ぁあっ、いだぃ、…」

背中を押さえて、床でのたうち回る京本を見て慎太郎も樹も掴み合っていた手を離す。

黄「背中…？背中が痛いの！？」

桃「いたい……いたぃっぃ、…う゛ぅぅ」

緑「きょも…！きょも！」

黄「北斗、救急車！」

脂汗を滲ませながら、尋常じゃない痛がり方をする京本を見てただ事では無いと判断した高地から飛んできた指示。

生まれて初めて、その3桁を押した。

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